研究課題
我々は降圧剤であるアンギオテンシンII受容体阻害剤 (ARB)が前立腺癌好発ラット(Transgenic Rat for Adenocarcinoma of Prostate, TRAP)における前立腺癌に対して増殖・進展抑制効果を示すことを見出すとともに臨床介入試験によりヒト前立腺癌症例における術後PSA再発を有意に遅延することを明らかにした。そこで我々は去勢抵抗性癌などの進行性前立腺癌に対するARBの効果について、我々が樹立した種々のラット前立腺癌モデルを用いて検討を行った。TRAPラット浸潤癌モデルを用いてARBの1つであるカンデサルタンの効果を検討したところ、側葉浸潤癌の発生個数および腺房当たりの発生率はいずれも有意に減少した。次に発光タンパクであるルシフェラーゼ遺伝子を導入したラット去勢抵抗性前立腺癌細胞を用いて経尾静脈移植および皮下移植モデル実験を実施し、カンデサルタンの転移に対する効果をin vivoイメージングにより検討した。経尾静脈移植実験における肺転移および骨転移頻度は、対照群、カンデサルタン群でほとんど差はみられなかった。一方、腫瘍の大きさの指標となる発光量は、肺転移巣でほぼ同等の値を示したのに対し骨転移巣では有意差はなかったもののカンデサルタンにより減少傾向が観察された。背部皮下移植実験では、腫瘍体積は対照群に比較してカンデサルタン群で有意に減少していた。また、ルシフェリンを用いた発光量ではカンデサルタン群で減少傾向はあるものの有意差はみられなかった。リンパ節転移は群間で有意差は観察されなかった。これらの結果はヒト前立腺癌の骨転移巣における癌細胞増殖の制御は骨痛による日常生活動作(ADL)低下を防ぐ観点から有益な知見であり、今後はカンデサルタンが骨内における癌細胞増殖を制御しているメカニズムを解明することは急務な課題と考える。
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