研究課題
私達は、Wntシグナル活性化による腸上皮幹細胞からの腫瘍形成に転写因子KLF5が必須であることを解明した。これは、KLF5が大腸癌治療薬の有力な分子標的であることを示す。しかしWnt-KLF5系は生体の正常機能制御も担うため、開発すべき薬剤は正常細胞を傷害せず癌細胞のみ選択的に抑制することが求められる。そこで、私達は、新たにKLF5の阻害化合物を設計し合成した。私達は、これらのKLF5阻害化合物が、2-20μMで大腸癌細胞をほぼ死滅させるのに対し、正常大腸細胞には傷害を与えないこと、大腸癌細胞でのみKLF5、Survivin、 TCF4の蛋白分解を促進することを解明した。 申請者は、化合物の化学構造と、癌細胞を選択的に抑制する癌抑制能との間に構造活性相関があることを見出した。今後、KLF5の作用阻害化合物群が、なぜKLF5、TCF4等の蛋白分解を大腸癌細胞選択的に促進するか、なぜ正常細胞を傷害せず大腸癌細胞のみ選択的に抑制するのか、について分子機構の解明を進める。本化合物群が実際にどの蛋白と結合し作用するか未解明である。KLF5の作用阻害化合物群の結合蛋白を解明し、これら結合蛋白とKLF5の相互作用阻害がなぜ癌細胞選択的抑制につながるのか分子機構を解明する。さらに、構造活性相関に基づき、化合物の化学構造を改良しin vivoで腫瘍の抑制効果の高い化合物の改良、創製を進める。癌の原因因子・変異と分子機構は急速に解明が進んでいる。それに比べ、癌原因因子の正常機能を抑制せず癌促進機能のみ選択的に抑制する方法の開発は進んでいない。このため、癌の分子機構解明が新たな抗癌薬開発につながっていない。本研究は、この困難を克服し、in vivoで正常細胞を傷害せず癌幹細胞から癌のみ選択的に抑制する、副作用が少なく効果の高い大腸癌治療薬開発を進める。
2: おおむね順調に進展している
新しい知見や構造活性相関などの解明が進んでいる。
今後とも、結合蛋白同定、in vivoで効果のある化合物の開発など推進する予定である。
今後、In vivoでの薬効解析、分子機構解析、化合物合成などで多くの研究費使用が予想されるため。
In vivoでの薬効解析、分子機構解析、化合物合成など
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