研究課題
淡明細胞型腎細胞がん104例・肺腺がん168例・胃腺がん105例・肝細胞がん37例・浸潤性乳管がん99例のがん部(T)と非がん部(N)のIllumina社Infiniumアレイを用いたメチロームデータをバイオインフォマティクス解析した。有効なプローブ全てを用いた主成分分析において、各検体のDNAメチル化プロファイルは、異なる臓器のT同士よりも、同一臓器のNとTの方がより似ていることがわかった。がんでは起源臓器固有のDNAメチル化プロファイルの多くが保たれている、あるいはその臓器の発がん因子により前がん状態Nに形成されたDNAメチル化プロファイルを保っていると考えられた。NとTで有意にDNAメチル化状態が異なるプローブは、腎1915個、肺2651個、胃2209個、肝5665個、乳腺2875個であり、5臓器で共通して異常を示すプローブは108個、4臓器以上では588個であった。これらのDNAメチル化異常がmRNA発現と逆相関することをReal time RT-PCR法で確認した。エンリッチメント解析において、4臓器以上で共通してTで高メチル化状態を示す231遺伝子のコードする分子は、転写因子に有意に集積を示した。これら分子をコードする遺伝子の多くはES細胞でbivalentな修飾を示し、発生・分化を制御する遺伝子と報告されるものである。複数臓器がんで共通してDNAメチル化亢進を示す遺伝子は、エピジェネティックに制御され細胞分化に寄与する遺伝子であり、これらが共通して発がんにおけるエピゲノム異常の標的になっていると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
研究は申請時の計画通り進展しており、科学的に有意な結果を得、その成果を原著論文として刊行した。
申請時の計画通り、横断的解析を通じた臓器特異的マーカーの探索を進める。
年度内に受理された論文の刊行費用を計上していたが、雑誌の刊行日程の都合で年度内に決済できなかったため。3月に予定していた一部の実験が実施者の都合で次年度に延期になったため。
論文の刊行に係る費用と延期された実験に係る消耗品に使用する予定。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 図書 (1件)
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