研究課題
平成28年度までに、淡明細胞型腎細胞がん104例・肺腺がん168例・胃腺がん105例・肝細胞がん37例・浸潤性乳管がん99例のがん部と非がん部のInfiniumアレイによるメチロームデータの臓器横断的解析により、細胞分化に寄与する遺伝子が諸臓器がんの発がん過程において共通してエピゲノム異常の標的になることを示した。平成29年度には、これら5臓器のうち臓器特異的マーカーに乏しい胃に着目し、胃がんの臓器特異的マーカーを取得することを目指した。胃がんでのみ高メチル化状態にあり、他の4臓器がんで低メチル化状態にあるCpG部位を27箇所抽出した。27箇所のDNAメチル化状態について、公共データベース(TCGA)上の胃がんを含む13種のがん種のメチロームデータを参照し、再現性があり胃がんと他の消化器がんとを特によく識別できるマーカーとして、それぞれ異なる遺伝子に紐づく2個のCpG部位を抽出した。このうち1個の遺伝子の当該CpG部位を含む領域にプライマーを作製してpyrosequence法によってverificationを行い、同一サンプルのInfiniumアレイによるDNAメチル化率とpyrosequence法によるDNAメチル化率がよく一致することを確認した。同プライマーセットを用いて、メチロームデータ取得例とは異なる検証例の胃・肺・腎・肝・大腸の各がん組織のDNAメチル化率を測定し、検証を行っている。胃がん20例・その他がん25例による中間評価では、高い感度・特異度をもって胃がんを他のがん種から識別できることが示されている。また、期間中に膵がん・尿路上皮がん・子宮体がん症例のがん部・非がん部のメチロームデータ、肝細胞がんの新たな症例のメチロームデータを取得し、臓器横断的解析に用いるデータの臓器数・症例数を増やした。
2: おおむね順調に進展している
当初計画の通り、複数臓器がんのメチロームデータの横断的解析の第二段階として、臓器特異的マーカーの検索に進んでいる。まず既存の臓器特異的マーカーに乏しい胃に着目し、絞り込んだ標的遺伝子1個の検証解析が順調に進行中である。また新たに3臓器のがん部・非がん部のメチロームデータを取得したため、今後の臓器横断的解析は8臓器で行えることとなった。
胃がんの臓器特異的マーカーの検証を進める。現在検証中の1遺伝子に関しては、平成30年度中に検証を終える予定であり、他のマーカー候補遺伝子の検証も順次行う。同じく臓器特異的マーカーに乏しい膵がんのメチロームデータが加わったため、膵がんの臓器特異的マーカー探索も行う。複数臓器の臓器特異的マーカーを取得できた際には、臓器特異的マーカーとなり得る遺伝子・遺伝子座の特徴について考察する。
試薬等消耗品の価格変動に伴う差額であるので、平成30年度に繰り越して消耗品費として使用予定である。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件)
Pathology International
巻: 68 ページ: 63-90
10.1111/pin.12631.
臨床病理
巻: 65(9) ページ: 1018-1027
日本臨牀
巻: 75/増刊6 ページ: 417-421
細胞
巻: 49(8) ページ: 21-25