研究課題
前年度までに行ったトランスポゾン誘導型膠芽腫マウスモデル由来ニューロスフェア細胞を用いた発現解析に基づいて絞り込んだ候補遺伝子群を対象として、主に機能解析と実験的機能阻害に伴い大きな影響を受ける遺伝子群の発現解析を行った。その結果、複数の幹細胞制御シグナル経路に影響を受ける膠芽腫幹細胞の増殖を促進する遺伝子として、Stat5bをみいだした。Stat5bは、Wnt経路関連因子Lgr5発現低下に伴い発現が抑制される遺伝子として抽出していたが、本膠芽腫幹細胞モデルにおいて、Hif2aノックダウン、bCateninノックダウンによって発現が抑制されることを明らかにした。低酸素培養条件下ではStat5b発現は促進され、通常酸素分圧下および低酸素培養条件下におけるHif2a阻害剤処理によってStat5bの発現が抑制されることをみいだした。また、Wnt経路阻害剤処理によっても、Stat5bの発現は顕著に抑制されることをみいだした。Stat5bの機能解析としては、本膠芽腫幹細胞においてStat5bをノックダウンすることによって、細胞周期進行の抑制およびアポトーシス細胞死の誘導を伴う顕著な増殖抑制効果を示すことを明らかにした。さらに、Stat5b阻害剤IQDMD処理によってStat5のリン酸化体の減少と、細胞周期停止およびアポトーシス細胞死が誘導されることを実証し、ノックダウンによる表現型と合致する知見を得ている。これらの結果は、膠芽腫組織における微小ネクローシス周囲Hif2a陽性低酸素領域におけるStat5b核内集積がみられ、Wnt経路関連因子Lgr5との共局在がみられた知見と合致している。以上の成果は、低酸素応答シグナル経路とWnt経路の統合的な下流標的因子であるStat5bは膠芽腫幹細胞の増殖促進因子であり、新規治療標的としての潜在的可能性を示す新規知見である。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件)
International Journal of Molecular Sciences
巻: 19 ページ: 2054
10.3390/ijms19072054
Journal of Alzheimer’s Disease
巻: 64 ページ: 563-85
10.3233/JAD-170994
American Journal of Cancer Research
巻: 8 ページ: 650-661
Technology in Cancer Research & Treatments
巻: 17 ページ: 1-11
10.1177/1533033818767936