研究課題
モデル動物の系では骨髄由来間葉系幹細胞は骨格筋組織に移植すると筋再生を促進することが報告されており、再生医療への応用が期待されている。本年度我々は正常ヒトiPS細胞から間葉系細胞の誘導を試み、間葉系幹細胞のマーカーの発現をFACSにて確認した。一方、ヒトiPS細胞から骨格筋系譜の細胞も誘導した。誘導した細胞はミオシン重鎖(MF20染色)陽性の多核の筋管を形成したが、筋分化しない細胞も混在した。骨格筋前駆細胞はFACS(CD56、CD82等)にて濃縮することが可能であった。培養液にTGFbeta阻害剤を加えると筋分化(myogenin発現と筋管形成)が顕著に促進され、また免疫不全筋ジストロフィーモデルマウス(NSG-mdx4Cv)の骨格筋への細胞移植効率を上げた。さらにγセクレターゼ阻害剤(NOTCHシグナルの阻害)も筋分化を中程度促進した。すなわち、ヒト多能性幹細胞から誘導される骨格筋前駆細胞の筋分化は、TGF-betaシグナル及びNOTCHシグナルによって強く抑制されていることが示唆され、筋ジストロフィーのヒトiPS細胞由来筋前駆細胞を用いた移植治療には、TGF-beta阻害剤とNOTCHシグナル阻害剤の併用が有効であると考えられ、今後移植による検討を行う予定である。我々がヒトiPS細胞から誘導を試みている間葉系幹細胞にもTGF-betaシグナルを抑制し、筋分化を促進する活性があるかどうか、骨格筋前駆細胞との共培養、マウス骨格筋への共移植により検討していく予定である。
4: 遅れている
ヒトiPS細胞から誘導した間葉系幹細胞が、生体から調整される間葉系幹細胞と同様の活性を持つことがまだ確認できていない。
筋ジストロフィーにおいては繰り返す筋線維の壊死・再生により、筋衛星細胞・筋芽細胞の数と活性が著しく低下している。その点を考慮して、H29年度は、間葉系幹・前駆細胞を単独で筋ジスモデルマウスへ移植するのではなく、細胞の移植治療に期待されている多能性幹細胞から誘導した骨格筋前駆細胞との共移植を行い、その筋再生促進効果を中心に検討していく。具体的には以下の実験を中心に研究を進めていく予定である。1.引き続きヒトiPS細胞からの間葉系幹・前駆細胞の誘導とその評価(遺伝子発現、細胞表面マーカー発現、骨、脂肪、軟骨への分化能等)を行う。2.誘導した間葉系幹・前駆細胞が筋分化を阻害するTGF-betaシグナルに拮抗するfactorを出しているかを検討する。3.共培養やコンディショナルメディウムを用いて骨格筋前駆細胞の筋分化能に与える影響を検討する(in vitro)。4.マウス骨格筋への共移植を行い、その効果を評価する(in vivo)。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件) 図書 (1件)
Stem Cells International
巻: 2017 ページ: -
10.1155/2017/7906843.
Stem Cell Reports
巻: 7 ページ: 263-278
10.1016/j.stemcr.2016.07.004.