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2017 年度 実施状況報告書

筋ジストロフィー病態における細胞内Ca2+動態の解明と新たな治療法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 16K08726
研究機関東京慈恵会医科大学

研究代表者

谷端 淳  東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (00508426)

研究分担者 武田 伸一  国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, その他部局等, 部長 (90171644)
青木 吉嗣  国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, その他部局等, 研究員(移行) (80534172)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードデュシェンヌ型筋ジストロフィー / サルコリピン / 筋小胞体 / リアノジン受容体 / SERCA
研究実績の概要

Dushenne muscular dystrophy (DMD) はジストロフィン欠損を原因とする遺伝性筋疾患であるが、未だ筋変性・壊死を阻止する決定的な治療法はない。DMDでは筋細胞内Ca2+濃度が高く、筋変性・壊死等の筋ジストロフィー病態と深く関わる。しかし、細胞内Ca2+濃度増加の機序に関しては、充分解明されたとは言えない。我々は、軽症の経過を辿るジストロフィン異常症に関する研究を背景として、ジストロフィン遺伝子exon45-55を欠失した短縮型ジストロフィンのみが発現するマウス (Tg/mdx) を新たに作出し、細胞内Ca2+動態を野生型 (WT)、DMDモデルマウス(mdx) と比較・検討した。
Tg/mdxの筋病理、筋機能はWTに極めて近いレベルまで回復しており、短縮型ジストロフィンは筋細胞膜の充分な保護効果があると考えられた。一方、Tg/mdxではジストロフィン糖タンパク質複合体に含まれるnNOSの局在がWTとは異なり筋細胞膜から細胞質に変化し、nNOS由来のNOが筋小胞体(SR)のRyanodine receptor: RyRをmdxと同程度ニトロシル化していた。このニトロシル化したRyRを介してSRから細胞質へのCa2+放出が亢進し、細胞内Ca2+濃度が上昇していた。しかし、RyRのCa2+放出能はWTと同程度維持されており、細胞質からSRへCa2+を取り込むSERCAの機能もWTと同程度保存されていた。我々はmdxにおけるSERCA機能低下に関わる因子としてSarcolipin: SLNに注目した。mdxのSLN発現はWT、Tg/mdxと比べて有意に高く、DMD病態にSLNを介したSERCA機能が重要な役割を担っていることが示唆された。そこでmdxとSLN KOマウスと交配させて、SLN KO/mdxを作出したところ、mdxと比べて筋機能が回復した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

Duchenne muscular dystrophyの細胞内Ca2+濃度上昇に大きくかかわる因子としてSLNを同定し、同因子の発現を抑制することでDMD病態の改善を誘導することが出来た。この結果はこれまでのDMDに対する治療法(細胞膜の安定性を改善する)とは異なり、細胞内a2+動態を制御することによりDMD病態の改善を目指す新しい治療法である。
この新規性は治療法開発だけでなく、DMD病態の重症度を推測する新しいマーカーとなりうる。

今後の研究の推進方策

SLNの発現調節機構はまだ明らかとなっていない。
最終年度はDMD病態においてなぜ、SLNの発現が上昇しているのかを明らかにし、SLNの発現調節因子を制御することで、SLNの発現を低下させ、DMDの治療を目指したいと考えている。
また、DMDに対する他の治療法を用いた時にサルコリピンの発現がいかに変化するかを明らかにしたいと考えている。

次年度使用額が生じた理由

当該年度初めに所属が変更となったため、年度のはじめは研究の進捗が遅くなったため、研究費の使用に変更が生じた。
最終年度となる2018年度は標的たんぱく質の発現制御をより詳細に解析するために、in vitroの系を新しい所属で立ち上げるために基金を使用したいと考えている。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] Treatment with the anti-IL-6 receptor antibody attenuates muscular dystrophy via promoting skeletal muscle regeneration in dystrophin-/utrophin-deficient mice2017

    • 著者名/発表者名
      Wada Eiji、Tanihata Jun、Iwamura Akira、Takeda Shin’ichi、Hayashi Yukiko K.、Matsuda Ryoichi
    • 雑誌名

      Skeletal Muscle

      巻: 7 ページ: 23

    • DOI

      10.1186/s13395-017-0140-z

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Low-Intensity Training and the C5a Complement Antagonist NOX-D21 Rescue the mdx Phenotype through Modulation of Inflammation2017

    • 著者名/発表者名
      Hyzewicz Janek、Tanihata Jun、Kuraoka Mutsuki、Nitahara-Kasahara Yuko、Beylier Teiva、Ruegg Urs T.、Vater Axel、Takeda Shin'ichi
    • 雑誌名

      The American Journal of Pathology

      巻: 187 ページ: 1147~1161

    • DOI

      10.1016/j.ajpath.2016.12.019

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Cytosolic Ca2+ Dynamics Through the SR is Associated with Pathology of Muscular Dystrophy.2017

    • 著者名/発表者名
      2)Tanihata J, Nagata T, Ito N, Saito T, Nakamura A, Minamisawa S, Aoki Y, Takeda S
    • 学会等名
      20th International Symposium on Calcium Binding Proteins and Calcium Function in Health and Disease (CaBP20)
    • 国際学会
  • [学会発表] Functional analysis of MyoD-transduced fibroblasts and urine-derived cells from healthy individual and patients with Duchenne muscular dystrophy.2017

    • 著者名/発表者名
      4)Takizawa H, Hara Y, Miyatake S, Tanihata J, Mizobe Y, Saito T, Takeda S, Aoki Y:
    • 学会等名
      XXII World Congress of Neurology
    • 国際学会
  • [学会発表] ジストロフィン欠損における血清microRNAの解析2017

    • 著者名/発表者名
      2)柴崎浩之,倉岡睦季,松坂泰成,谷端 淳,内海文彰,田沼靖一,今村道博,武田伸一
    • 学会等名
      2017年度生命科学系学会合同年次大会(第40回日本分子生物学会年会)
  • [学会発表] Sfpq欠損は超長鎖遺伝子の発現を減少させ、重篤な筋成長不全を伴う代謝性ミオパチーを引き起こした.2017

    • 著者名/発表者名
      3)細川元靖,武内章英,谷端 淳,飯田 慶,武田伸一,萩原正敏
    • 学会等名
      第93回日本解剖学会近畿支部学術集会
  • [学会発表] Cytosolic Ca2+ dynamics through the SR is associated with pathology of muscular dystrophy.2017

    • 著者名/発表者名
      6)Tanihata J, Nagata T, Ito N, Saito T, Nakamura A, Minamisawa S, Aoki Y, Takeda S
    • 学会等名
      第3回Neo Vitamin D Workshop学術集会
  • [学会発表] 筋ジストロフィー病態における細胞内Ca2+動態の解明と新たな治療法の開発2017

    • 著者名/発表者名
      7)谷端 淳,永田哲也,伊藤尚基,齊藤 崇,中村昭則,南沢 享,青木吉嗣,武田伸一
    • 学会等名
      日本筋学会第3回学術集会
  • [図書] 実験医学 増刊 超高齢社会に挑む骨格筋のメディカルサイエンス2018

    • 著者名/発表者名
      谷端 淳・野口 悟(編 武田 伸一)
    • 総ページ数
      230
    • 出版者
      羊土社
    • ISBN
      978-4-7581-0370-1
  • [図書] CLINICAL CALCIUM 運動器-エネルギー代謝連関-2018

    • 著者名/発表者名
      谷端 淳・武田 伸一(編 山内 敏正)
    • 総ページ数
      156
    • 出版者
      医薬ジャーナル社
    • ISBN
      978-4-7532-8633-1

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公開日: 2018-12-17  

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