研究課題/領域番号 |
16K08731
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
百田 洋之 東京大学, 医科学研究所, 講師 (60469971)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 脳腫瘍 / マウスモデル / 生体イメージング / ウイルス療法 |
研究実績の概要 |
平成28年度の当初の計画として、1) 書類作成・申請手続き、2) tv-aマウスの準備、3) RCAS産生細胞の準備、4) イメージング用マウスの実用化、の4つを挙げたが、研究は概ね計画通りに進行している。 1)の書類作成・申請手続きは、本研究に必要な機関承認と大臣確認の申請であるが、現在、新たな遺伝子やマウスを導入するために申請中であり、1-3ヶ月以内に承認・確認が得られる見込みである。2)のtv-aマウスの準備については、当施設への凍結胚の移送と回復、p53欠損マウスとの交配、遺伝子型の確認が終了し、Gtv-ap53+/+マウスとGtv-ap53-/-マウスの2系統が確立した。3)のRCAS産生細胞の準備は、既に承認を得ている遺伝子分についてはDF-1細胞への導入が終了し、マウス脳細胞へのがん遺伝子の導入と脳腫瘍(glioma)の作成が成功している。4)のイメージング用マウスの実用化については、発光タンパクluciferaseを導入したRCASベクターを用いて、マウスに作成した脳腫瘍(glioma)を生体イメージング機器(IVIS)にてモニタリングすることに成功した。同様にIVISを使用した蛍光タンパクによる脳腫瘍切片からの腫瘍細胞の同定も成功している。 これらの研究成果は、平成28年10月の日本癌学会学術総会と、平成28年12月の日本脳腫瘍学会学術総会で発表した。また、名古屋大学との共同研究として、本マウスモデルを用いた脳腫瘍の病理学的解析結果について、現在論文投稿中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画から見て、新たな実験分の書類作成・申請手続きは若干遅れており、現在進行中であるが、2年前に通した機関承認と大臣確認により、研究全体のセッティングはできるため、この部分に関して研究を進めた。特に、tv-aマウスの準備が順調に進み、p53野生型または欠損型マウスの2系統を作成でき、これによって多種類の脳腫瘍を作れる体制が整った。RCAS産生細胞は前勤務施設から移送したベクターまたはDF-1細胞を利用してスムーズに作成することができた。これらのtv-aマウスとRCAS産生細胞のセットアップが完了し、研究室で購入したイメージング機器(IVIS)も使用することができたため、作成したマウスの脳腫瘍を発光または蛍光イメージングで観察することができた。全体として、書類作成・申請作業を除けば、概ね当初予定した研究段階に達していると思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究予定として、現在提出中の機関承認申請書と大臣確認申請書が通れば、新たなRCASベクターの使用、新たな遺伝子改変マウスの作成が可能となる。新たなRCASベクターについては、すでに米国から一部のDNAコンストラクトを輸入してあり、その他の遺伝子情報についても入手または確認済みであるので、RCASベクターと産生細胞の作成からその使用まではスムーズに進むことが予想される。遺伝子改変マウスについても、作成に必要なDNAコンストラクトのMTA取得とベクター取得、動物センターへの依頼などを行っており、申請書類の承認・確認が取れ次第、迅速に進める準備ができている。また、ウイルス療法の効果の試験についても、研究室内にウイルスのストックが完成しているため、マウスの腫瘍ができ次第、治療試験を開始できる見込みである。 予想される課題として、遺伝子改変マウスの作成が困難な場合、作成したマウスに腫瘍ができない場合が考えられるが、DNAコンストラクトの変更、外部委託の利用、RCASベクターの変更などで対処する。ウイルス療法の効果が不十分な場合は、他の薬剤との併用などで、治療効果を調整する。当初の予定になかった副次的な発見や新規脳腫瘍の作成などの成果も予想されるため、積極的に研究結果を発表することを目指す。
|