研究課題/領域番号 |
16K08732
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
伊藤 美智子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 特任准教授 (00581860)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | マクロファージ / 細胞死 / crown-like structure |
研究実績の概要 |
申請者らはメラノコルチン4型受容体(MC4R)を欠損するマウスを用いて、肥満の表現型を背景に脂肪肝から非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を発症するマウスモデル(慢性モデル)を確立した。さらに、4週間の高脂肪食負荷によって脂肪肝を発症したMC4R欠損マウスに対して、ごく低用量の四塩化炭素投与によって肝細胞死を誘導し、その後1週間の経過でNASH様病変が観察可能な短期モデルを確立した。NASHの病態形成において炎症・線維化の起点になると考えられるhepatic crown-like structure (hCLS)を構成するマクロファージの動態を明らかにするため、短期モデルを用いて蛍光色素によるマクロファージの追跡実験を行ったところ、常在性マクロファージがhCLSを形成することを既に見出している。本年度はさらにマクロファージマーカーを用いてhCLS構成マクロファージの特徴を検討した。セルソーターによって分取したF4/80高発現常在性マクロファージおよびCD11b高発現浸潤性マクロファージを用いて定量的PCRを行ったところ、常在性マクロファージマーカーとして既に知られているClec4fに加え、CD169の発現が常在性マクロファージに限局していることを見出した。免疫染色においても、hCLS構成マクロファージはClec4fおよびCD169陽性の染色像が得られた。CD169プロモーター下にジフテリア毒素受容体を発現するマウスの骨髄をMC4R欠損マウスに移植して短期モデルを作成し、ジフテリア毒素を用いてhCLSを消去すると組織学的に肝線維化が抑制された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肝臓には常在性マクロファージとMCP-1 (monocyte chemoattractant protein-1)/CCR2 (C-C chemokine receptor type 2)系を介して遊走する浸潤性マクロファージの2つの分画が存在するが、新たに肝常在性マクロファージマーカーとしてCD169を見出したことで、hCLS構成マクロファージの由来が検討可能になった。また独自に確立した短期モデルを用いて、肝線維化発症におけるCD169陽性細胞の機能的意義を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
hCLS構成マクロファージは活性化マクロファージマーカーであるCD11c陽性であることから、CD11cの発現レベルに応じてマクロファージを分離し、マイクロアレイ解析を行っている。正常肝のマクロファージあるいはNASH肝のCD11c陰性マクロファージと比較して、CD11c陽性マクロファージにおいて特異的に発現増加・減少する因子を探索する。慢性・短期モデルを用いて候補因子の病態生理的意義を検討する。
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