研究課題/領域番号 |
16K08734
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
田中 直樹 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (80419374)
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研究分担者 |
中嶌 岳郎 信州大学, 学術研究院医学系, 助教 (30581011)
青山 俊文 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (50231105)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 非アルコール性脂肪肝炎 |
研究実績の概要 |
本研究のゴールは、8週間の高コレステロール食によりアリルハイドロカーボン受容体(AhR)ノックアウト(KO)マウスに生じる非アルコール性脂肪肝炎(NASH)発症機構の解明である。 平成28年度は、この現象の再現性を確定させることを目標とした。なぜなら、長期間の観察では、高コレステロール食投与による二次変化や代償変化、そして加齢に伴う変化が加味されてしまうからである。 具体的には、もっと短期間の高コレステロール食投与でNASHが発生するか、確認を試みた。そこで野生型・KOマウスそれぞれに2・4週間の通常食、あるいは高コレステロール食を投与し、その表現型を解析した。どちらの期間でも、高コレステロール食を投与したKOマウスだけに血清ALT、AST(肝傷害マーカー)の著明な上昇を認めた。肝組織を光学顕微鏡で観察すると、高コレステロール食を投与したKOマウスだけに肝小葉内の炎症細胞浸潤、肝細胞の風船状膨化変性、大滴性脂肪沈着を認め、NASHの初期像として矛盾しない所見であった。定量PCR法にて肝組織の遺伝子発現を解析したところ、炎症性サイトカイン・線維化促進因子の増加が高コレステロール食投与KOマウスだけで確認され、血液生化学検査や肝組織像の裏付けができた。 食事中のコレステロールによって胆汁酸代謝が大きく変化し、疎水性胆汁酸が肝細胞傷害に関連することが以前より報告されている。上述のマウス検体を用いて胆汁酸の網羅的解析を行ったところ、NASHを発症したマウスで有意に増加していたのはタウロコール酸であった。しかしタウロコール酸自身は比較的肝毒性が弱く肝細胞傷害の結果として上昇することが知られているので、タウロコール酸の上昇はNASH発症の原因ではなく結果である可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の実施計画として、2・4週間のコレステロール食投与にてKOマウスにNASHが発生するかどうかを確認することを第一に掲げ、当初の計画を達成できた。そして、これらのサンプルを得たことにより、今後の研究の足掛かりが構築できた。以上より、現時点では研究は大きな問題なく進行していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、さらに短期(数日)の高コレステロール食投与でKOマウスにNASHが発生するか確認する。次に、AhRは肝細胞だけでなく炎症細胞にも存在しているので、どの細胞のAhR欠損がNASHに関与しているかを明確にしたい。海外共同研究機関(米国国立衛生研究所)でAhRを発現するアデノウイルスを作成して頂いたので、アデノウイルスをKOマウスに投与し、肝細胞のAhRを回復させた時にNASHが発症するか調べる予定である。アデノウイルスの実験は米国国立衛生研究所で行い、採取した肝臓サンプルを当方で解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画で見込んだよりも、超低温槽の購入と動物飼料や薬品の消耗・購入が安価であったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は平成29年度請求額と合わせて、薬品、チップ、キットなどの消耗品購入に充てる。
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