研究課題
I. C5a受容体発現マウス癌細胞の高浸潤・転移能の検討マウス腎癌細胞RenCaにマウスC5a受容体遺伝子を挿入してC5a受容体を発現させた RenCa/C5aR と、コントロール RenCa/mock を作製した。両細胞を異なる近赤外線 probe(Qtraker800とQtraker655)で標識して混合し、抗卵白アルブミンIgGと共に同系のBalb/cマウス皮膚内に注射し、直後に尾静脈から卵白アルブミンを投与して接種部にアルザス反応を誘導し、癌微小環境にC5aを供給した。近赤外線800nmと655nmを蛍光測定装置IVISで測定して、癌細胞浸潤の広がりを調べると、2日後に RenCa/C5aR は RenCa/mock に比較してアルサス反応誘導によって1.6倍広く浸潤した。熊本地震によるCO2インキュベータやその他の機器破損等で癌細胞が全滅し、そのため研究遂行が遅れたので、転移実験に関しては次年度以降に検討する。II. 癌細胞C5a受容体発現と患者癌促進、予後との関係解析腎癌の転移がある患者では、C5a受容体陽性の腎癌が多かった。根治手術後の浸潤性尿上皮癌患者は、癌細胞がC5a受容体陽性であると生存率が低かった。乳癌においても、癌細胞のC5a受容体発現は癌の悪性度が高く、病期進行例に多く、リンパ節転移頻度も高かった。さらに、生存率も低かった。これらの結果は、C5a受容体発現が癌の進展を促進し、予後不良と関係が深いことを示している。今後、胃癌やその他の癌にも解析範囲を広げ検討する予定である。
3: やや遅れている
マウス腎癌細胞RenCaにマウスC5a受容体遺伝子を挿入し、C5a受容体を発現させた RenCa/C5aR 細胞のストックが融解し、実験用に再度培養するとC5a受容体を発現する細胞の割合が数パーセントに減少していた。それで、cell sorter による陽性細胞を分別し、調整していた。ところが、熊本地震によるCO2インキュベータやその他の機器破損等で癌細胞が全滅し、その後、新規機種の納入、及び、施設の改修等に時間が掛かったため、実験用癌細胞が作製できず実験が遅れた。
アレルギー反応による癌微小環境C5a産生の癌増殖促進効果の解析の実行。マウス腎癌細胞RenCaにマウスC5a受容体遺伝子を挿入してC5a受容体を発現させた RenCa/C5aR とコントロール RenCa/mock を異なる近赤外線probeで標識し、両者を混合して抗卵白アルブミンIgGと共に同系のBalb/cマウス皮膚内に注射し、直後に尾静脈から卵白アルブミンを投与する。さらに、癌細胞注射部の組織を採取しパラフィン切片を作製する。TAMをCD68とCD163/204で、MDSCをCD11bとGr1、血管内皮細胞をCD31に対する抗体で各々免疫染色し、浸潤細胞や血管増生を比較する。以上より、アレルギー反応による癌細胞の増殖・浸潤促進効果が明らかになる。さらに、同様の実験をRenCa細胞のマウス腎被膜接種で行い、肺転移へのC5a-C5a受容体系の役割を解析する。
熊本地震によりCO2インキュベータが転倒・破損し、培養癌細胞が全滅したため、実験に必要な細胞数が確保できず、本年度に計画していた動物実験の十分な遂行が不能であったので、次年度に持ち越しとなった。現在、実験に必要な遺伝子改変癌細胞を新たに作製し、培養して実験に必要な細胞数の確保に全力を投入している。これまでに確保できた癌細胞を使って近赤外線プローブ標識し、注射したマウス皮内での浸潤を生体のまま観察しようと試みたが、細胞の拡散による蛍光低下で浸潤先端部の確認が不明瞭になり、浸潤面積の測定が困難であることが判明した。そこで、癌接種部の組織切片を使って蛍光の広がる面積を測定する方法への変更が必要になった。したがって、さらなる細胞とマウスの確保が生じてきた。これらの事情により、繰り越し金額を次年度施行予定の動物実験と試薬購入に必要な金額の増額に充てる。
動物実験のためのマウス購入費、飼育費、および培養関連試薬、細胞標識プローブなどの実験試薬の購入に、繰り越し金額の研究費を充てる。
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