研究課題
Ⅰ. C5a-C5a受容体系をターゲットにした治療法の試み転移のある腎臓癌患者で癌細胞C5aR発現率が高かった。そこで、C5a受容体発現マウス腎細胞癌Renca細胞とmock細胞をマウス腎臓被膜下に接種し、転移を比較して癌病巣で産生されるC5aの効果を調べたが、技術の困難さから再現性のある結果が得られなかった。したがって、この系にC5a受容体拮抗剤や抗C5a受容体抗体投与して腫瘤形成、浸潤、腫瘍血管増生、リンパ節転移等を調べ、癌促進抑制効果を解析するには至らなかった。Ⅱ. C5a-C5a受容体(C5aR)系の前立腺癌進展および抗腫瘍免疫回避との関係解析泌尿器系で唯一未だ検討していない前立腺癌とC5a系との関係を解析した。前立腺癌患者161名中83名(52%)の癌細胞がC5aR陽性であったが、PSA濃度、pathological Tstage、Gleason grade、予後の臨床病理学的パラメーターとの相関はみられなかった。しかし、C5aRの高発現症例ではPD-L1発現陽性率が高かった。去勢抵抗型癌(CRPC)では6例中3例が陽性であった。前立腺癌株LNCap(去勢感受型)、C4-2(CRPC)、DU145(CRPC)、PC3(CRPC)はすべてC5a受容体のmRNA、たんぱく質を発現し細胞膜にも存在がみられた。C5aは濃度とC5aRに依存して、前立腺癌細胞のグルタミン消費を2.1倍、増殖を1.3倍、浸潤を3倍亢進した。抗腫瘍免疫応答を抑制するPD-L1は産生が1.4倍、細胞膜発現が2.6倍亢進した。以上の結果は、C5a-C5aR系が前立腺癌の増殖・浸潤を亢進し抗腫瘍免疫応答からの回避能を増強させていることが明らかとなった。C5a癌促進作用は治療困難なCRPCでも確認されたので、C5a-C5aR系を標的とした治療法はCRPCも含めた前立腺癌進行防御に有効であることが示唆された。
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J. Oral Maxillofac. Surg. Med. Pathol.
Biosci. Biotech. Biochem.
巻: 83 ページ: 1382-1384
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