研究課題/領域番号 |
16K08742
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
岡田 誠治 熊本大学, エイズ学研究センター, 教授 (50282455)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | がん微小環境 / 患者腫瘍移植マウスモデル / 胆管細胞癌 / 原発性滲出性リンパ腫 / 消化管間質腫瘍 / がん関連線維芽細胞 / 高度免疫不全マウス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、新規無毛高度免疫不全マウス体内に「ヒトがん微小環境」を構築し、がん微小環境研究に供することを第一の目的とする。そして、がん微小環境を標的とした新規治療法開発を第二の目的とする。 胆管細胞癌腫瘍株の移植モデルマウスを用いて、胆管癌細胞株をがん関連線維芽細胞と同時移植すると腫瘍形成が早まることから、胆管細胞癌においてはがん関連線維芽細胞が腫瘍増殖に重要な働きを示すことを見いだした。また、胆管細胞癌の患者腫瘍組織移植モデル(Patient-derived xenografts; PDX)を樹立し、継続的に薬剤Xを経口投与することでその抗腫瘍作用を確認した。 原発性滲出性リンパ腫(Primary effusion lymphoma;PEL)では転写因子PU.1がメチル化されており、PU.1の活性化によりPEL細胞はアポ-トーシスに陥ることを証明した。また、他にもメチル化されている転写因子があり、その制御によりPEL細胞はアポ-トーシスに陥ること、メチル化阻害薬の効果に違いがあることなどを示した。消化管間質腫瘍(Gatrointestinal stromal tumor; GIST)の手術サンプルを高度免疫不全マウス皮下に移植して、患者腫瘍組織移植モデル(Patient-derived xenografts; PDX)作成を試みている。これまでに10症例の移植を試みたが、腫瘍増殖は認められなかったため、免疫不全マウスの種類を変更する予定である。胃癌、食道癌、膵癌で1例づつPDXの樹立が確認できた。また、GIST培養によりがん関連線維芽細胞が増殖することを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胆管細胞癌腫瘍株や原発性滲出性リンパ腫の移植モデルマウスを用いて、ある程度の成果を得た。患者腫瘍組織移植モデルを作成中であるが、各々樹立までに1年程度かかるので、確実に研究を遂行する予定である。熊本地震により飼育している高度免疫不全マウスが約半数が死亡したため、一時期移植実験が困難となった。また、昨年度は研究室の修理などがあり、実験がやりにくい状態にあった。現在ほぼ回復しており、精力的に移植実験を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
胆管細胞癌および消化管間質腫瘍において、手術サンプルを高度免疫不全マウス皮下に移植して、様々な患者腫瘍組織移植モデル(Patient-derived xenografts; PDX)を作成する。また、その他の様々な腫瘍を用いてPDXモデルを樹立したいと考えている。PDXの樹立には長期間かかるので同時に細胞株の移植モデルを用いて、腫瘍およびがん微小環境を対象として新規治療法の開発を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
熊本地震によりマウス使用が一時制限されていた。今年度実験室等の修理があり、場所の制限や冷蔵庫が壊れるなどにより、物品の購入が制限された。実験室等の修理は概ね終了したので、次年度には予定通り使用する。
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