研究課題/領域番号 |
16K08743
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
小海 康夫 札幌医科大学, 医学部, 教授 (20178239)
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研究分担者 |
堀 司 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (20398324)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 移植片対宿主病 / 造血幹細胞移植 / バイオマーカー / GVHD / アロ移植 / 同種移植 |
研究実績の概要 |
造血幹細胞移植は血液悪性腫瘍などに対する根治的な治療法であり、その適応は先天性免疫不全や代謝疾患など多岐にわたっている。しかし、重篤な合併症としてのGVHDが造血幹細胞移植の成否を左右する。そのためGVHDの克服は非常に重要な課題である。 我々はプロテオミクス技術を用いてGVHDマウスモデルにおいてGVHDのバイオマーカーとしてケモカインCCL8を同定し、ヒト臨床サンプルおよびマウスにおける血清での高発現が生命予後と強く相関することを示した。血清中に含まれる単一分子としてGVHDのバイオマーカーとして同定された唯一の分子であり、内外で高い評価を受けている。(The Hematologist. 2008,5(3):10) CCL8のGVHDにおける役割を解析することを目的としてCCL8欠損マウスをzinc finger nucleaseを用いて近交系C57BL6のバックグラウンドで確立し、Balb/cアロ造血幹細胞移植をCCL8欠損マウスに実施したところ、劇的な予後の改善が認められた。 すなわち、CCL8が欠損している環境ではGVHD死亡は起こらず、CCL8が移植片から産生され再びホスト中に検出されるようになると同時にGVHD死亡が再発する。この事実から、CCL8の存在が、マウスの予後に直結していることが明らかとなり、CCL8はGVHD死にきわめて重要な役割を有していることが示唆される。 そこで、本研究では造血幹細胞移植での重篤な合併症GVHDにおけるCCL8の役割を分子レベルで解析し、CCL8の診断治療での分子標的としての可能性を基礎的に検討することを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
28年度は1)C57BL6バックグラウンドのCCL8KOマウスを用いた解析,2)Balb/cバックグラウンドのCCL8KOマウスの作出,3)CCL8アンタゴニスト開発を目指した分泌タンパク質産生を実施することを計画した。1)C57BL6バックグラウンドのCCL8KOマウスを用いた解析については初期的な血液細胞を中心とした解析および移植後の動態の解析をほぼ終了した。2)Balb/cバックグラウンドのCCL8KOマウスの作出については予定どおり完成し、実験に供与するために生産段階に入った。また一部は初期的検討実験を開始した。3)CCL8アンタゴニスト開発を目指した分泌タンパク質産生については、組み換え系の準備がほぼ整った。大量産生、タンパク質精製の段階に進む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画書に申請したとおり、1)B6KOとBalbKOを用いた双方向性アロ移植による検討,2)中和抗体を含む各種モノクローナル抗体の作成,3)Pichia pastorisを用いたアンタゴニストと作成系の確立の実施に進む要諦である。1)B6KOとBalbKOを用いた双方向性アロ移植による検討についてはBalbKOの産生準備が整い次第移植実験を開始する。2)中和抗体を含む各種モノクローナル抗体の作成については、1次免疫スクリーニング系の検討段階であり鋭意検討を進め抗体作成に取り掛かる。免疫動物をBalbKOを用いて実施する系は既存免疫動物にみられない抗体の作出が期待される。3)Pichia pastorisを用いたアンタゴニストと作成系の確立、大量産生は終了したので本年度は精製を速やかに進め様々な実験系に供与を開始したい。
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