研究課題
造血幹細胞移植は血液悪性腫瘍などに対する根治的な治療法であり、その適応は先天性免疫不全や代謝疾患からがんなどの悪性固形腫瘍にまで多岐にわたっている。しかし重篤な合併症としての移植片対宿主病が造血幹細胞移植の成否に重大な影響をあたえ、移植片対宿主病のコントロールが造血幹細胞移植治療の成否を左右する。そのため移植片対宿主病の克服は造血幹細胞移植医療を安全かつ効果的に推進するために必須である。我々は血清プロテオミクスと機械学習を組み合わせたアルゴリズムを応用して移植片対宿主病のバイオマーカーとしてケモカインCCL8を同定した。ヒト臨床サンプルとマウスサンプルの双方の検討で本分子の発現が生命予後と強く相関し、さらに後ろ向き臨床研究により移植後30日以内での高発現は早期移植関連死に強く相関することを明らかにした。そこでCCL8の移植片対宿主病における機能を分析する目的で遺伝子欠損マウスを遺伝子編集法にて作成し、アロ骨髄を移植したところ早期移植関連死が強く抑制されることを見出し、その機構の基礎的検討を続けている。今回の研究によりCCL8欠損マウスではアロ骨髄に対するT細胞免疫は保たれていること、放射線感受性はマウスの遺伝背景に関係なく保たれていること、移植片対宿主病標的臓器において骨髄球系ミエロペロキシダーゼ陽性細胞群が大きく減少しており組織障害の抑制と深く関わっていることを明らかにできた。
2: おおむね順調に進展している
ケモカインCCL8の移植片対宿主病における発現更新の移植片対宿主病での役割を検討するために2種類の近交系マウスの遺伝背景を有する遺伝子欠損マウスすなわちC57BL6とBALBcの背景を有するマウスを作出することができた。さらにLY5.1と5.2のアイソジェニックなマウスペアも作出できた。これらのマウスを用いて移植片対宿主病による死亡に関連する各種因子を総合的に分析する基盤が構築された。すなわち移植片対宿主病は、移植前の宿主への抗がん剤治療や放射線照射などによる組織障害、移植ドナーT細胞による宿主アロ抗原の認識と免疫活性化、標的臓器での組織障害の3段階が必要とされている。遺伝子改変マウス群の確立によりそれぞれの段階を詳細に分析することが可能となった。
作出したマウスを用いて移植片対宿主病による死亡に関連する各種因子を総合的に分析する基盤が構築された。すなわち移植片対宿主病は、移植前の宿主への抗がん剤治療や放射線照射などによる組織障害、移植ドナーT細胞による宿主アロ抗原の認識と免疫活性化、標的臓器での組織障害の3段階が必要とされている。遺伝子改変マウス群の確立によりそれぞれの段階を詳細に分析することが可能となっている。そこで移植前処置に対するCCL8欠損マウスの感受性、T細胞を中心とするアロ免疫反応、標的臓器における分子および細胞レベルでの反応性を詳細に解析することによりCCL8の移植片対宿主病における役割を解明し、移植片対宿主病の早期バイオマーカーの確立と治療系への可能性を臨床研究と平行して推進して行く。
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