研究実績の概要 |
我々は、移植片体宿主病(GVHD)モデルマウスの血清プロテオミクスにより、ヒト臨床サンプルおよびマウスGVHDにおける血清での高発現が生命予後と強く相関するケモカインCCL8を見出した(Blood. 2008,111:4403-4412、Exp Hematol. 2011, 39(11): 1101-11112)。 CCL8欠損マウスを作製し、アロ移植を実施したところ、GVHDの予後が劇的に改善された(米国血液学会56th ASH,2004)。本研究では、GVHD組織障害におけるCCL8の役割を分子レベルで解析し種々の重要な知見を得た。 ①CCL8の免疫系での役割の検討:本基礎的検討で、CCL8欠損はリンパ球系の発生、成熟および活性化には変化をもたらさないことが確認された。CCL8が欠損しても免疫機能に影響がないことが証明され、感染症などのGVHD以外の重篤な合併症への懸念が解消した。しかしなT細胞免疫および抗原提示機能および体液性免疫機能については今後も検討を要する。 ②標的臓器障害における役割の検討:本基礎的検討によって、GVHD標的臓器である皮膚、肝臓、腸管における組織障害が、CCL8欠損により著明に抑制されていることが明らかとなり、さらにGVHDによる組織障害はすべての臓器に見られるものの、障害レベル軽減されることが判明した。このことは、CCL8が特定の造血または免疫系の機能に関わっているのではなくGVHDの基盤的組織障害機構に重要な役割を果たしていることを示唆する。そこで、障害臓器におけるCCL8の機能を検討することを目指し、CCL8の発現様式、発現細胞を同定し組織障害との関連を明らかにした。中和抗体などの治療実験はさらに検討継続が必要である。
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