研究課題
腎明細胞肉腫は小児期に発生する悪性腎腫瘍の中では腎芽腫に次いで頻度が高く、BCL6 corepressor(BCOR)のC末端の約100塩基の重複(BCOR遺伝子内重複)が特徴的である。同様の遺伝子変異は小児の未分化肉腫や脳腫瘍の一部、子宮内膜間質肉腫の一部でも報告されている。BCORは転写抑制因子であるが、異性型PRC1(BCOR複合体)の一要素としても報告されている。本変異は、BCOR複合体形成に必要な機能ドメインを含む領域に存在することから、腫瘍発生に重要な役割を果たしていると考えられる。一方、BCOR遺伝子内重複に加えて、他のBCOR変異が様々な腫瘍で報告されており、本研究では、これらのBCOR変異・融合遺伝子による腫瘍発生機構解明を目的としている。本年度は、胎児期の腎由来細胞である293細胞に野生型BCOR、BOCR遺伝子内重複、MOCKを導入した安定発現細胞に対して、マイクロアレイ解析を行って発現解析を行った。野生型BCOR、BCOR遺伝子内重複で共通して発現が上昇するプローブ433個、共通して発現が低下するプローブ1014個が同定された。BCOR遺伝子内重複で特異的に発現が上昇するプローブは666個、低下するプローブは752個であり、後者には細胞膜に関連する遺伝子が多く含まれていた。BCOR遺伝子内重複は野生型BCORとは異なる遺伝子の発現を制御する可能性が示唆され、BCOR遺伝子内重複で特徴的に発現が低下するプローブにはヒストンのマイナーなバリアントが2個含まれており、それらが遺伝子の発現制御を介して腫瘍発生に関与している可能性があり、その腫瘍発生における意義を検討中である。
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Neoplasia
巻: 21 ページ: 117-131
10.1016/j.neo.2018.10.007