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2016 年度 実施状況報告書

転写調節因子IκBζとその結合因子による免疫応答の制御機構

研究課題

研究課題/領域番号 16K08747
研究機関東邦大学

研究代表者

山崎 創  東邦大学, 医学部, 准教授 (70315084)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードIκBζ / NF-κB / 自然免疫 / マクロファージ / ヘルパーT細胞
研究実績の概要

研究代表者らは以前、微生物感染時に発現が誘導される転写調節因子であるIκBζを同定し (Yamazaki et al 2001 J. Biol. Chem.)、この分子が自然免疫応答時の遺伝子発現調節に重要な役割を果たすことを示してきた (Yamamoto et al. 2004 Nature; Yamazaki et al. 2005 J. Biol. Chem; Motoyama et al. 2005 J. Biol. Chem.; Matsuo et al. 2007 Biochem. J.; Yamazaki et al. 2008 J. Biol. Chemなど)。一方最近、IκBζが獲得免疫系においても重要な役割を担うことが明らかになりつつあり、細胞外病原体に対する防御や自己免疫疾患に関与するTh17細胞の分化に不可欠であることなどが示されている (Okamoto et al. 2010 Nature)。研究代表者は、網羅的なプロテオーム解析によりIκBζと結合する因子を同定し、その機能解析を進めたところ、同定された分子の一つであるIκBζ結合因子 (仮称IκBζBP1)がTh17細胞で強く発現していることを見出した。そこで、Th17細胞の分化や機能におけるIκBζBP1の役割を検討したところ、IκBζBP1を欠損したナイーブCD4陽性T細胞は、IL-6とTGF-β存在下にTCRを活性化させるin vitroでのTh17細胞分化系において、Th17分化効率が低下していることが明らかになった。また、IκBζBP1の欠損マウスでは、Th17細胞が主要な役割を果たす病態モデルである実験的自己免疫性脊髄炎 (Experimental Autoimmune Encephalomyelitis, EAE)に対して耐性であったことから、IκBζBP1はTh17細胞の分化に重要な因子であると考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

網羅的なプロテオーム解析により同定したIκBζ結合因子の機能解明に注力し、一定の成果を得ることができた。in vitroの細胞分化系を用いた解析と、病態モデルを用いた個体レベルでの解析を中心に、今回同定した分子がTh17細胞の分化に重要な役割を担うことを明らかにした。未解明な点が多いヘルパーT細胞の分化機構の解明に寄与することができた。

今後の研究の推進方策

IκBζBP1を欠損するナイーブT細胞は、Th17細胞への分化が障害されることが明らかになったため、この分子がTh17細胞分化においてどのような役割を果たすかを明らかにする。まず、Th17分化条件下における種々のTh17関連因子(IκBζなどの、これまでにTh17細胞への分化に必要であることが報告された一連の因子:IκBζ, RORγt, RORα, AhR, BATF, IRF4など) の発現を検討する。次に、in vitroにおけるTh17分化はIL-6とTGF-β1の同時刺激によって誘導されるので、IκBζBP1の欠損細胞においてIL-6やTGF-β1のシグナル伝達が正常であるかについて、Stat3やSmad2/3のリン酸化を指標にして検討し、IκBζBP1自体の発現に関わるシグナル伝達経路についても明らかにする。また、Th17分化時には、Th17細胞の運命決定因子であるRORγtやRORαが、Th17細胞に特異的な遺伝子 (Il17a, Il17f, Il23r, Il21など) の発現調節領域にリクルートされることが知られているので、このリクルートがIκBζBP1の欠損によって障害されるかどうかをクロマチン免疫沈降法 (ChIP)によって明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

各メーカーのキャンペーンなどを利用したことにより、当初の予定よりもわずかに使用額を抑えることができた。

次年度使用額の使用計画

プラスチック器具等の消耗品費に充てる。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Depletion of myeloid cells exacerbates hepatitis and induces an aberrant increase in histone H3 in mouse serum2017

    • 著者名/発表者名
      Piao X., Yamazaki S., Komazawa-Sakon S., Miyake S., Nakabayashi O., Kurosawa T., Tanaka M., Mikami T., Ohmuraya M., Oikawa A., Kojima Y., Kakuta S., Uchiyama Y., Tanaka M., Nakano H.
    • 雑誌名

      Hepatology

      巻: 65 ページ: 237-252

    • DOI

      10.1002/hep.28878

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Critical contribution of nuclear factor erythroid 2-related factor 2 (NRF2) to electrophile-induced interleukin-11 production2017

    • 著者名/発表者名
      Nishina T., Deguchi Y., Miura R., Yamazaki S., Shinkai Y., Kojima Y., Okumura K., Kumagai Y., Nakano Y.
    • 雑誌名

      J. Biol. Chem.

      巻: 292 ページ: 205-216

    • DOI

      10.1074/jbc.m116.744755

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The nuclear protein IκBζ forms a transcriptionally active complex with nuclear factor-κB (NF-κB) p50 and Lcn2 promoter via the N- and C-terminal ankyrin repeat motifs.2016

    • 著者名/発表者名
      Kohda A., Yamazaki S., Sumimoto H.
    • 雑誌名

      J. Biol. Chem.

      巻: 291 ページ: 20739-20752

    • DOI

      10.1074/jbc.M116.719302

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Short form FLICE-inhibitory protein promotes TNFα-induced necroptosis in fibroblasts derived from CFLARs transgenic mice.2016

    • 著者名/発表者名
      Shindo R., Yamazaki S., Ohmuraya M., Araki K., Nakano H.
    • 雑誌名

      Biochem. Biophys. Res. Commun.

      巻: 480 ページ: 23-28

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2016.10.015

    • 査読あり
  • [学会発表] 細胞死制御因子cFLIPの肝細胞特異的欠損マウスを用いた肝障害モデルにおけるクッパー細胞および骨髄由来細胞の役割2016

    • 著者名/発表者名
      朴 雪花, 山﨑 創, 駒澤-左近 幸子, 三宅 早苗, 中林 修, 田中 稔, 大村谷 昌樹, 及川 彰, 角田 宗一郎, 内山 安男, 田中 正人, 中野 裕康
    • 学会等名
      第89回日本生化学会大会
    • 発表場所
      仙台国際センター/東北大学川内北キャンパス (宮城県・仙台市)
    • 年月日
      2016-09-26
  • [学会発表] アポトーシス細胞は腸内細菌非依存的にReg3βを産生し腸管の恒常性を維持する2016

    • 著者名/発表者名
      進藤 綾大, 大村谷 昌樹, 駒澤 幸子, 三宅 早苗, 山﨑 創, 仁科 隆史, 小西 博之, 木山 博資, 三上 哲夫, 荒木 喜美, 中野 裕康
    • 学会等名
      第89回日本生化学会大会
    • 発表場所
      仙台国際センター/東北大学川内北キャンパス (宮城県・仙台市)
    • 年月日
      2016-09-26
  • [学会発表] 転写因子NF-κBとそのパートナータンパク質IκBζによる転写活性化複合体の形成機構2016

    • 著者名/発表者名
      神田 朗, 山﨑 創, 住本 英樹
    • 学会等名
      第27回日本生体防御学会学術総会
    • 発表場所
      九州大学病院キャンパス内コラボステーションⅠ視聴覚ホール (福岡県・福岡市)
    • 年月日
      2016-07-09

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公開日: 2018-01-16  

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