研究課題
2017年度に報告したように、心筋特異的HK2トランスジェニックマウス(TG)および心筋特異的MASTGを複数系統樹立し、心筋特異的miR-143/145TG(miRTG)と交配したが、病態は改善されなかった。しかし、興味ある事に、miRTGではHK2の発現が劇的に低下しているにも関わらず、ヘキソキナーゼアッセイでは殆どmiRTGと野生型に差が見られなかった。そこで心筋におけるもう一つの主要なヘキソキナーゼであるHK1の発現を調べた所、特に増加は見られなかった。よってmiRTGでは何らかのメカニズムにより、グルコース6リン酸のレベルを維持している可能性が示唆された。また、HK2は解糖系のみではなく、ペントースリン酸経路 (PPP)の重要な酵素である。しかし、miRTGでは還元型グルタチオンが増加していたが、その生合成にPPPで作られるNADPHが大きく関与している。そこでグルコース6リン酸から6-ホスホグルコノ-1,5ラクトンへの変換を行うG6PDの発現を調べた所、miRTGで亢進していた。よって、miRTGではHK2の低下をG6PDの亢進により補っている可能性が示唆された。そのメカニズムは明らかではないが、miRTGで発現が亢進しているp62は解糖系やPPPに関与する一連の分子の発現を亢進するという報告があり、p62の発現増強がHK2の低下をマスクしている可能性が示唆された。一方、2017年度にACE阻害剤のカプトプリルがIGF1受容体のリン酸化を抑制することを報告した。そこでAT1受容体阻害剤(ARB)について検討したが、明らかな抑制は見られなかった。よってIGF1受容体のリン酸化の抑制にはアンジオテンシンーAT1受容体以外の経路の関与が示唆された。また、miR-143が炎症や発癌に関わる重要な分子を標的にしている事が明らかになり、現在病態への関与を解析中である。
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Clinical and Experimental Hypertension
巻: 41 ページ: 307-311
10.1080/10641963.2018.1481419