研究課題/領域番号 |
16K08751
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究 |
研究代表者 |
中島 弘幸 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 免疫・微生物学, 助教 (10574064)
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研究分担者 |
関 修司 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 免疫・微生物学, 教授 (80531392)
木下 学 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 免疫・微生物学, 准教授 (70531391)
中島 正裕 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 免疫・微生物学, 助教 (70738103)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Kupffer細胞 / 非アルコール性脂肪性肝炎 |
研究実績の概要 |
Fibroblast growth factor 5 (FGF5) は哺乳類において体毛の長さを決定する因子として知られている。この遺伝子を欠損したマウスに高脂肪食を8週間摂取させると、肝臓に脂肪化とともに強い炎症所見と繊維化がみられ、ヒトにおけるNASHに酷似した病変をきたす。さらに我々は、このモデルにおいて肝単核球のうち特にマクロファージが異常に増加していることを見出した。増加している細胞群はF4/80が陽性でありCD68とCD11bの両者が陽性であった。この特異的なマクロファージはCRIg遺伝子が陰性であり、貪食能も弱いためCD11b陽性分画、すなわち遊走KC/Mφ由来であると考えられた。この分画は炎症性サイトカインであるTNFのmRNAの発現が亢進しており、FasLを表出していることから、炎症の起点となり肝細胞を傷害する可能性が高い。抗TNF抗体を継続的に投与しながら高脂肪食を摂取させると、FasLの発現は抑制され、肝機能は改善した。遊走KC/Mφは骨髄由来であり、放射線に対して強い感受性を持つ特徴がある。そこで高脂肪食を摂取させながら、低用量放射線(1Gy)を週1回8週間照射すると、肝障害が著しく改善することを見出した。肝組織を比較すると放射線照射群は肝細胞の脂肪化は抑制されていないが、炎症性細胞の浸潤と繊維化が消失していた。肝臓から採取される細胞量は減量し、特に特徴的にみられるCD68,CD11b両者が陽性である分画が消失していた。これらの結果はFGF 5欠損マウスに高脂肪食を摂取させた際に出現する特異的なマクロファージが、このモデルにおける炎症に主要な役割を果たすことを示している。単純脂肪肝とNASHとの違いは炎症と繊維化の出現であるが、その発症メカニズムにおいて遊走KC/Mφが主要な役割を果たすことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Kupffer細胞には骨髄由来のものと肝固有も分画が存在する。肝臓の脂肪代謝において前者は炎症を促進する機能を有していることをこれまで報告してきた。その一方で後者はコレステロールの代謝に重要な核内レセプターやトランスポーター遺伝子を発現していることを見出しており、代謝そのものに関与する可能性がある。蛍光標識リポプロテインを用いた検討において肝固有Kupffer細胞はHDLを特に取り込む機能があることを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
肝固有Kupffer細胞はリポプロテインを選択的に取り込む機能をもっている。今後は取り込んだ後にどのような機能を担っているのか検討する。放射性同位元素を用い、コレステロール逆転送試験を実施し余剰コレステロールの腸への排泄に関与するか否か検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会の発表が事情により中止となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
試薬、実験動物の購入にあてる予定である。
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