研究課題/領域番号 |
16K08754
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
川上 恭司郎 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (90589227)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | エクソソーム / ミクログリア / 神経炎症 / プロテオーム |
研究実績の概要 |
本研究は炎症時に存在する細胞外ヒストンの細胞障害性に関して、エクソソーム上のヒストンがその役割の一部を担っている可能性を活性化ミクログリア由来のエクソソームを用いて、細胞および動物レベルにおいて明らかにすることを目的としている。今年度は以下の実験を行った。 【①ミクログリア細胞エクソソームの単離】エクソソームフリーFBS添加培地で培養したBV2(マウスミクログリア細胞)にLPSを処理し、翌日に培養液を回収し、エクソソームを超遠心法により精製した。精製したエクソソームをウエスタンブロット解析し、LPS処理によりエクソソーム中のヒストンが増加することを確認した。 【②マウス凍結脳エクソソームの単離】マウスの凍結脳を用いて脳組織内に存在するエクソソームの単離を試みた。2012年に報告された既報の方法で脳エクソソームを単離し、ウエスタンブロット解析でエクソソームマーカーなどを調べたところ、収量および純度が不十分であることがわかった。当研究室で開発した改良法を用いることにより十分量かつエクソソームの性状を持つ脳エクソソームの単離が可能になり、動物での脳エクソソーム解析を詳細に行うことが可能な状況となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BV2細胞にLPSを処理し、翌日培養液を回収し、超遠心法にて単離したエクソソームをウエスタンブロットすることによりヒストン発現量の増加を確認している。また、マウスの凍結脳からのエクソソーム単離が可能になったことから、動物へLPSを投与した後に脳組織を採取し、エクソソームを単離することで脳内でのエクソソームがどのような変化を起こしているか解析が可能となった。以上のことから、神経炎症時の脳内におけるエクソソーム中のヒストン分子の役割を明らかにする本研究は、おおむね順調に進展していると考えた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は以下の通りである。 ①BV2細胞にLPSを処理して得たエクソソームを神経細胞モデルPC12細胞に投与し、神経細胞障害性を検討する。また、ヒストンの細胞障害性を抑制する物質でエクソソームを前処理し、神経細胞障害性が軽減するかを検討する。 ②BV2細胞にLPSを処理して得たエクソソームをマウス脳実質または脳室内に投与した後、脳を摘出し、凍結切片を作製する。染色により神経細胞の脱落、ミクログリアやアストロサイトの活性化を検出し、脳への細胞障害性を評価する。 ③マウスの脳実質または脳室内にLPSを投与した後、脳を摘出する。摘出脳からエクソソームを精製し、エクソソーム中のヒストンの存在を確認する。さらにミクログリア特異的エクソソームを精製し、ヒストンの発現変化を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
エクソソームに関する研究は本研究以外にも行っており、他の研究の試薬と共通するものが多く、使用期限を考慮して既に購入済みの試薬を先に使用するなど、予定の試薬の購入を遅らせる事態が発生したが、基金である利点を活用し、翌年分にスライドすることが可能であったため商品の重複購入を避けることにした。これからウエスタンブロットによる確認、初代培養、動物実験、組織染色などの実験があるため予算は無駄なく本研究のために執行できる予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
基本的には研究計画書通りの割合での支出である。細胞培養、超遠心、プロテオーム解析、ウエスタンブロット解析、組織染色、抗体、動物など研究計画に基づき無駄なく執行していく予定である。
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