本研究は炎症時に存在する細胞外ヒストンの細胞障害性に関連して、エクソソーム上のヒストンがその役割の一部を担っている可能性を活性化ミクログリア由来のエクソソームを用いて明らかにすることを目的としている。今年度は以下の実験を行った。 【LPS刺激によりエクソソームに発現誘導されるタンパク質の選抜と分子ネットワーク解析】 昨年度のプロテオーム解析結果を再検討した。LPS、アミロイドβ、IL-4でそれぞれ処理したBV2細胞(マウスミクログリア細胞株)より培養上清中に放出されたエクソソームに発現誘導されたタンパク質の中から、共通して変化するタンパク質を除くことにより、LPS処理のみで変化するタンパク質を選抜した。その結果、増加するタンパク質として11個、低下するタンパク質として15個が同定された。それらについて、KeyMolnetによる分子ネットワーク解析を行い、関連するネットワークを同定した。 【活性化ミクログリア細胞由来エクソソームのミクログリア細胞活性化能の検討】 LPSにより活性化した細胞から放出されたエクソソームが細胞活性化作用を有するかを検討するために、LPS処理したBV2細胞由来のエクソソームを、無血清培地下でBV2細胞に加えた。翌日に培養液を回収し、培養液中のTNF-αを測定した。その結果、LPS処理細胞由来のエクソソームを添加したBV2細胞の培養上清ではLPS未処理細胞由来のエクソソームを添加したBV2細胞の培養上清よりTNF-α濃度が高くなっていた。このことからLPS刺激により放出されるエクソソームにはBV2細胞の活性化能があることが分かった。
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