研究実績の概要 |
マラリア原虫は、赤血球侵入時に「寄生胞膜」と呼ばれる膜を形成する。この寄生胞膜は、宿主免疫応答・環境ストレスに対する障壁として機能するが、その一方で、栄養源であるヘモグロビンから原虫を隔離する。そのため、マラリア原虫は、サイトストームと呼ばれる特徴的な膜構造を形成し、ヘモグロビンを取り込み、代謝の場である食胞へと輸送する。本研究では、熱帯熱マラリア原虫の生殖母体期に着目し、ヘモグロビン輸送に関連する膜構造に局在する分子群を同定し、それらのヘモグロビン輸送における機能を明らかにすることを目的としている。本年度は、生殖母体期における寄生胞膜分子のプロファイリングを目的として、生殖母体期に発現するPfs16を指標として、間接蛍光抗体法により熱帯熱マラリア原虫の寄生胞膜分子4種類(ETRAMP4, 5, 10.2, 10.3)の発現及び局在を、無性生殖期と生殖母体間で比較した。これらの結果から、熱帯熱マラリア原虫の寄生胞膜を構成する分子は、生殖母体期に特有のもの(ETRAMP4, ETRAMP10.3)、無性生殖期と生殖母体期に共通のもの(ETRAMP10.2)、無性生殖期に特有のもの(ETRAMP5)に分類できることが明らかになった。マラリア原虫の無性生殖期に発現する赤血球侵入関連分子は、遺伝子欠損原虫の表現型が致死となるため解析が困難である。これに対し、生殖母体期に特異的に発現する分子群は、逆遺伝学的手法を用いた解析が可能である。現在、生殖母体期特異的に寄生胞膜に発現するETRAMP4, ETRAMP10.3に着目し、CRISPR-Cas9ゲノム編集システムを用いた遺伝子改変を試みている。
|