研究課題/領域番号 |
16K08761
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
加藤 健太郎 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (50508885)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 赤痢アメーバレクチン / 溶血活性 |
研究実績の概要 |
本年度は赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)が発現しており、溶血活性を有するレクチン(EhIgl)の溶血活性部位の同定を試みた。 まず、非病原性で溶血活性が弱いアメーバ(Entamoeba dispar)の有するレクチン(EdIgl)の溶血活性をEhIglと比較し、EdIglの溶血活性が有意に低ければ、EdIglとEhIglのアミノ酸配列に違いが見られる部位に、EhIglの溶血活性部位が絞り込まれると考えた。しかしながら予想に反し、EdIglにもEhIglと同程度の溶血活性があり、両タンパク質ともにC末端側に溶血活性部位が存在することが明らかとなった。さらに、E. histolyticaにおいて、EhIglの発現量を低下させると、E. histolyticaの有する溶血活性が低下することから、組換え型Iglタンパク質で得られた知見に加え、実際の腸管病原寄生虫であるE. histolyticaにおいても、EhIglが溶血活性を制御していることを明らかにすることができた(論文投稿中)。 同時に、組換え型EhIglタンパク質のうち、ランダムに変異を入れたもの、C末端の一部を欠失したもの及びC末端を断片化したものの溶血活性を調べた。その結果、EhIglのアミノ酸配列のうち、726番目から967番目の間に溶血活性部位が存在することが明らかになった。 これらの結果より、IglがE. histolyticaの溶血活性に関与する病原因子であることが示され、EhIglの溶血活性部位をさらに絞り込むことで、創薬の際の標的アミノ酸決定することができ、Iglが結合する宿主細胞上のリガンドの同定が容易になると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度計画していた以下の点について自己評価を行った。 当初はE. disparのIglには溶血活性がないと予想しており、E. histolyticaのIglと比較することでEhIglの溶血活性部位を絞り込もうと考えていた。しかしながら、予想に反してEdIglにもEhIglと同程度の溶血活性があるという新知見を得ることができた。さらにE. histolyticaにおいて、Iglの発現量が溶血活性に影響を与えることを明らかにできたことで、本分子がE. histolyticaの病原性に深く関与していることが示唆された。また、EhIglの溶血活性に関与する部位を250アミノ酸程度に絞り込むことができた。 以上の点より、おおむね研究計画通りに順調に進展していると評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
現在までのところ順調に研究が進展しているので、研究計画通りに以下の研究を進める。 1)EhIglの溶血活性部位をさらに絞り込む。また、同定された溶血活性部位に細胞障害性があるか明らかにする。 2)同定された溶血活性部位に対するモノクローナル抗体を作製し、組換え型Iglおよび赤痢アメーバによる溶血活性ならびに細胞障害性が阻害できるか検証する。 3)Iglの発現量がE. histolyticaの溶血活性に影響を与えることを明らかにできているので、Iglの作用機序を解明する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究結果を誌上発表するために投稿しているが、年度内に採択結果が出ず、次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
現在投稿中の論文の掲載料に充てる。
|