研究実績の概要 |
本年度は昨年度から引き続き、赤痢アメーバ (Entamoeba histolytica, Eh) が発現しており、溶血活性を有するレクチン (EhIgl) の溶血活性部位の同定を試みた。 非病原性で溶血活性の弱いアメーバ(Entamoeba dispar, Ed)も同様のレクチンを有すると同時に、IglにはIgl1とIgl2のアイソフォームがあるため、それぞれ組換え型タンパク質を作製し、各アイソフォームの溶血活性を調べたところ、すべてで溶血活性が確認された。Entamoeba histolyticaとEntamoeba disparではEhIgl2とEdIgl2の発現量は同等だが、EhIgl1の発現量がEdIgl1よりも高いため、EhIgl1の発現を抑制したEntamoeba histolytica株を作製し、溶血活性を検証した。その結果、EhIgl1発現抑制株では、親株と比較して溶血活性が低く、EhIgl1の発現量がEntamoeba histolyticaの溶血活性に影響を与えることが示された [Kato K eta al., PLoS ONE, 12, e0181864 (2017)]。 また、抗体によるEhIglの溶血活性中心の検証では、EhIgl1のC末端側を認識するモノクローナル抗体がEntamoeba histolyticaの溶血活性を抑制した一方で、組換え型EhIgl1の溶血活性を増強するという非常に興味深い結果が得られた。このことは、EhIgl1の溶血活性中心がC末端側に存在するという以前に報告した結果を補強するものであり、EhIgl1のC末端側を抗体あるいは薬剤でブロックすれば、Entamoeba histolyticaの溶血活性を抑制できることを示唆する結果である。 これらの結果より、EhIgl1のC末端側に溶血活性中心があり、その発現量や多量体化が溶血活性に影響を与えることが示唆され、今後の研究に繋がる研究成果が得られた。
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