本年度も引き続き、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)が発現しており、溶血活性を有するレクチン(EhIgl)の溶血活性部位同定を行った。EhIglのフラグメントを組換え型タンパク質として大腸菌で発現し、Niカラムを用いて精製した。計8種類のEhIglフラグメントタンパク質に関して溶血活性アッセイを行い、活性部位の絞り込みを行った結果、EhIglのアミノ酸787-846の領域に溶血活性が存在することが明らかとなった。本領域はEntamoeba属のIgl分子のみが有するアミノ酸配列である可能性が高く、この領域を標的とした抗体あるいは薬剤により、赤痢アメーバが有する病原性を抑えることができると考える。 また、EhIglに対するモノクローナル抗体を供与頂き、EhIglが赤痢アメーバの培養液中に分泌されるか検討したところ、培養液中のEhIglを検出できる抗体があり、その抗体を用いた評価系の構築を試みた。しかし、赤痢アメーバ培養液中に多量に含まれるウシ血清成分(アルブミンや抗体)を除く必要があり、評価系の構築には至らなかった。そのため、GPIアンカー型タンパク質であるEhIglが、赤痢アメーバが有するホスホリパーゼにより切り出されるかの検討実験を行えず、今後も継続して研究を行う予定である。実際にEhIglが赤痢アメーバから分泌され、その病原性に寄与していることが明らかとなれば、本評価系により分泌を抑制する方法についての検討ができ、将来的に赤痢アメーバ感染による発症を抑える方法を開発できる。
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