マラリアに対する有効なワクチンはこれまでに開発されていない。その原因の1つにマラリアでは免疫記憶が成立しにくいことが挙げられる。我々は、抑制因子IL-27を産生する新規制御性CD4+T細胞「Tr27」を見出し、マラリアにおける免疫抑制機構を報告してきた。さらに最近、抑制因子IL-27は記憶CD4+T細胞の形成・維持を阻害する結果を得たことから、マラリア原虫感染に伴う免疫記憶阻害のマウスモデルを作成し、免疫記憶抑制のメカニズムを解明を目的とした。 記憶細胞の解析には抗原特異的細胞のモニターをする必要がある。しかしながら、これまでは抗原特異的T細胞を表面分子(CD11ahiCD49dhi細胞)で評価するしかなく、表面分子の発現低下なのか細胞が消失したのか判断出来なかった。そこで、マラリア抗原特異的CD4+T細胞受容体トランスジェニックマウスを導入し、PbT-II細胞(CD45.1+)をC57BL/6マウスへ養子移入してPbAを感染させたところ、PbT-II細胞の割合は感染によって増加、治療により減少し、予備実験結果の再現性を確認できた。さらに、IL-27受容体欠損マウス(WSX1-/-)バックグラウンドにかけ戻してWSX1-/-PbT-IIマウスを作成し、同様の実験を行った。その結果WSX1-/-PbT-II細胞のみ、マラリア原虫感染および治癒後において長期生存することが確認できたことから、我々の仮説を証明することができた。
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