研究課題/領域番号 |
16K08766
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
津久井 久美子 国立感染症研究所, 寄生動物部, 主任研究官 (00420092)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Entamoeba histolytica / lysosome / receptor / protease |
研究実績の概要 |
本研究では赤痢アメーバに特異的に存在するリソソーム酵素輸送受容体cysteine protease binding protein family (CPBF)の細胞内輸送システムの理解、リガンド認識機構の解明、系統解析を通してユニークな小胞輸送機構、分子認識システム、タンパク質成立の進化過程を明らかにしたい。CPBFはファミリー分子として存在し、共通のドメインから成るが、分子間で多様なリガンド特異性を持つ。この解析から典型的なモデル生物では得られないリソソーム形成分子機構に関する知見や新規薬剤ターゲットの提供が期待される。 1)CPBFの輸送を制御する分子機構解明:CPBF輸送可視化のため、新たな蛍光タンパク質プローブとしてmCherry、UnaGの発現系を確立した。また、CPBF機能解析の精度向上を目指し、コドン変異を導入したCPBFの発現プラスミドの準備を行った。 2)リガンド結合の分子機構解明:小麦胚芽無細胞発現系を用いたレセプターとリガンド共発現と共結晶解析を目指し、GST-CPBF1, GST-CPBF2, CP-A5-FLAG, CP-A1-FLAG, His-ICP2発現プラスミドを準備した。さらにCPBF1とcysteine protease 5 (CP5)を同時に合成すると結合が見られることが示された。しかしCP活性が検出されなかった。 3)α-amylase制御を介した病原性制御の可能性の検討:CPBFにより輸送されるα-amylaseについて、病原性との関連を検討した。α-amylase輸送受容体であるCPBF2発現抑制株では特異的にマトリゲルへの侵入活性が低下することが明らかになった。しかしα-amylaseの発現抑制や高発現株においてはマトリゲルへの侵入活性に変化は無く、α-amylase活性によらないCPBF2の機能が存在する事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CPBF解析の準備は進んでいる。新たにα-amylase活性と病原性の検討を行い、直接的な関係性は示されなかったものの、CPBF機能に新たな側面を見いだせる可能性が考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
1)CPBFの輸送を制御する分子機構解明:CPBF輸送可視化のためmCherry、UnaG融合CPBF発現ベクターの作成と発現株の観察を行う。また、コドン改変CPBF輸送発現株の樹立と遺伝子発現抑制プラスミドとの同時発現を行い実験系の確立を行う。 2)リガンド結合の分子機構解明:小麦胚芽無細胞発現系を用いたレセプターとリガンド共発現と共結晶解析についてシャペロン分子など、CPBF, CP、ICP以外に結合に関与する可能性のある分子を共存させた合成系を検討する。 3)α-amylase制御を介した病原性制御の可能性の検討:CPBF2遺伝子発現抑制株で観察されたマトリゲルへの侵入活性の低下が何によって起るのかを検討する。運動、貪食、エンドサイトーシス、細胞表面分子のターンオーバー等を念頭に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験材料の作成に時間を使ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
質量分析、合成遺伝子作成、無細胞系でのタンパク質発現実験等に使用予定。
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