研究課題/領域番号 |
16K08769
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
川本 進 千葉大学, 真菌医学研究センター, 客員教授 (80125921)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 低酸素ストレス / 病原真菌 / 細胞周期制御 / シグナル伝達 / 環境応答 |
研究実績の概要 |
病原真菌Cryptococcus neoformans(クリプトコックス)は我が国に常在する真菌の中で 最も病原性が強く、易感染患者、特にエイズ患者の直接死因としても極めて重要な真菌である。本菌は生育に酸素が必須な偏性好気性酵母であるが、自然環境からヒトに感染時、肺に感染して血流に乗り血液脳関門を通過後、脳内に至って髄膜炎等を起こすと考えられており、高酸素環境(自然環境、肺)から低酸素環境(血流、脳内)への劇的な酸素濃度変化などに打ち勝って初めて増殖し病原性を示す。我々は、本菌の細胞周期制御機構を研究中に、本菌のユニークな低酸素ストレスへの応答現象を見出し、本菌の低酸素ストレス応答機構と細胞周期制御機構とは深く関連していることを明らかにして来た。しかるに、平成29年度には、本菌の低酸素ストレス応答機構とそれに深く関連する細胞周期制御機構との全体像をつかむため、本菌の低酸素応答関連遺伝子や細胞周期制御関連遺伝子として、新たな遺伝子についても同定して解析を進めた。一方、病原真菌クリプトコックスのの低酸素応答の分子細胞シグナリングについて、我々のこれまでの研究成果を中心にして、新たな知見も加えて14編の引用論文を挙げて考察し、総説論文を執筆して発表し、また、クリプトコックスのカイコ感染モデルについても、我々の研究成果も含めて考察し、44編の引用論文を挙げて総説論文を執筆して発表した。更に、病原真菌Aspergillu fumigatus においては、菌が感染する際、肺組織への侵入部位では酸素濃度が低下することが知られており、クリプトコックスの場合と同様、菌は低酸素環境に適応できない場合、感染を進行させることができないが、我々が見出した新規転写因子AtrR が、低酸素下での生育に深く関わることを見出して報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
私たちは、クリプトコックスの細胞周期制御機構を研究中に、本菌のユニークな低酸素環境ストレスへの応答現象を見出し、それが本研究の出発点になっており、本菌の細胞周期制御機構と低酸素環境ストレス応答機構とは深く関連している。本菌の低酸素ストレス応答機構とそれに深く関連する細胞周期制御機構を含めた全体像をつかむため、本菌の細胞周期制御機構や低酸素環境ストレス応答機構に関連すると想定される複数の新たな遺伝子を同定して解析を進めている。また、本菌の低酸素応答の理解に向けて考察を進めて報告し、更には、本菌のカイコ感染モデルについても考察を進めて報告した。
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今後の研究の推進方策 |
クリプトコックスの低酸素環境ストレス応答機構と細胞周期制御機構とは深く関連しており、それぞれに関連することが想定される新たな遺伝子の解析を更に詳細に進めて行く予定である。本菌の低酸素ストレス応答機構とそれに深く関連する細胞周期制御機構の全体像に迫れることが期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 平成29年度には、当初に予定していた「人件費・謝金」(当初予定:400,000円)について、研究活動の多くの部分を研究代表者のみで実施することができ、研究補助者を予定していたほど雇用しなくて済んだ(使用額:168,000円)ので、その結果などにより、未使用額(851,972円)を生じた。 (使用計画) 平成30年度には、上記未使用額分も含めて、消耗品などの物品費のほか、国内外の学会などに参加して、研究発表・情報収集するための国内外旅費として使用するとともに、研究補助者を雇用して、人件費・謝金としても使用する予定である。
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