研究課題/領域番号 |
16K08781
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
大岡 唯祐 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 講師 (50363594)
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研究分担者 |
藺牟田 直子 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (00643470)
西 順一郎 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (40295241)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Escherichia albertii / III型分泌系 / 鞭毛機能 |
研究実績の概要 |
新興下痢症起因菌Escherichia albertii は、2003年に大腸菌の近縁種として同定された菌種であり、腸管病原性大腸菌や腸管出血性大腸菌と同様、LEE領域にコードされたIII型分泌系を主要病原因子として持つこと、また、細菌学的特徴として、通常の培養条件下では運動性を示さないことなどがわかっている。申請者は、計29株のE. albertiiのゲノム配列を決定し、菌種内および近縁菌種間との大規模な比較ゲノム解析から、本菌のゲノム特性を多数同定している。それらの知見の中で、以下の2点は、E. albertiiの特性を理解する上で非常に興味深い点である。 1)“E. coli type III secretion system 2 (ETT2)”と呼ばれる第2のIII型分泌系(ETT2-T3SS):大腸菌進化系統では、ETT2-T3SSをコードするETT2領域が全ての株において部分的に欠失しており、機能しないと考えられているが、E. albertii では構造遺伝子群が完全な形で残っている。 2)べん毛合成と走化性:E. albertiiでは、鞭毛合成および発現調節に関わる遺伝子群が保存されているにも関わらず、走化性関連遺伝子群が完全に欠失している。 本研究では、“ETT2-T3SSの病原機構への関与”と“鞭毛(様)構造の機能”という2点を中心に、E. albertiiの種特性および病原機構との関わりを明らかにすることを目的として、当該遺伝子群の変異株を用いた感染実験など詳細な機能解析を進めている。これまでの解析から、運動性に関して、複数株が保持することが分かってきており、現在、その機序等を明らかにするための抗体や変異株の作製を進めている。また、ヒトへの病原性を調べる上で臨床由来株の数を確保するため、小児下痢症患児由来株のデータ収集を実施し、国内学会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H28年度の研究計画として、①ETT2 および鞭毛合成系遺伝子群の遺伝子発現条件の検討、②機能解析のための標的蛋白質に対する抗体作製、③機能解析のための遺伝子破壊株の作製、④ETT2 および鞭毛合成系遺伝子群の蛋白質発現条件の検討、⑤in vitro における運動能の有無の検討、⑥種々の培養細胞への感染実験による機能解析の6項目を計画した。 項目①に関しては、感染実験を行う条件でのmRNA発現を確認している。項目②については、標的タンパク質4種類に対する抗体作製を行ったが、抗体価が低いため再度抗体を作製するかどうか検討中である。項目③については、候補となる4つの遺伝子(鞭毛合成関連2遺伝子、ETT2-T3SS構成遺伝子2遺伝子)の変異株の作製を進めており、鞭毛の1遺伝子のみ完了し、残りについては作成中である。項目④については、抗体および変異株の作製と並行して進める必要があるため、進んでいない。項目⑤については、運動能を示す株が存在することが確認できたため、鞭毛構造について電子顕微鏡を用いた観察に進める予定である。項目⑥については、変異株の準備が出来次第、感染実験に進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、抗体および変異株の作製を実施する。機能解析に有効な抗体が得られない可能性を考え、他の融合タンパクを用いた抗体作製等も検討する予定である。運動性に関しては、運動性が見られた株について、鞭毛構造を電子顕微鏡により確認するとともに、運動能ならびに走化性に関わる遺伝子群の同定を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬等購入時の予定額と実際の価格の違いなどにより誤差が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
試薬購入に充てる。
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