研究課題
新興下痢症起因菌Escherichia albertiiは、2003年に大腸菌の近縁種として同定された菌種であり、申請者らが行った計29株のE. albertiiのゲノム配列決定お よび菌種内・近縁菌種間の大規模比較ゲノム解析から、本菌に特異的な遺伝子群や病原性関連遺伝子群を多数同定した。中でも本菌の特性を理解する上で非常に興味深い知見として、1)E. coli type III secretion system 2 (ETT2)領域にコードされる第2のIII型分泌系(ETT2-T3SS)[大腸菌進化系統では、ETT2-T3SSをコードするETT2領域が全ての株において部分的に欠失しており、機能しないと考えられている]の構造遺伝子群が完全な形で残っていること、2)鞭毛合成および発現調節に関わる遺伝子群が保存されているにも関わらず、走化性関連遺伝子群が完全に欠失していることを見出した。加えて、本菌の特性として、O抗原合成関連遺伝子群の多様性が存在することが分かってきた。本研究では、ETT2-T3SSの機能解析を進めたが、細胞侵入性には直接的に関連しないことが判明し、病原性に関わるような結果は得られていない。また、鞭毛機能の解析から、培養環境の悪化により、本菌が運動性を示すことが明らかとなり、そのための環境因子について解析を進めている。走化性については、運動性を示す条件での遺伝子発現を調べており、それらについて論文作成中である。加えて、申請者らが取得したゲノム情報およびデータベース上に登録された株のゲノム情報についてO抗原合成系の大規模比較解析を行い、40種類のO抗原遺伝子型(EAO1-EAO40)を同定した。また、その多様性を利用し、PCRによるEAO-genotypingシステムを構築し、そのシステムを用いて、動物・ヒト由来株のO抗原タイプを明らかにした。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件)
Pathogens and Disease
巻: 77(2) ページ: ftz014
10.1093/femspd/ftz014