これまでに、抗菌レクチンRegIIIbetaの発現により制御される腸内細菌の一つであるバクテロイデス属細菌と本菌から産生されるビタミンB6が腸管内に感染したサルモネラの排除活性に関与することを明らかにした。さらに、in vitroにおいて、ビタミンB6はあるバクテロイデス属細菌の増殖を促進した。そこで、マウスを用いてin vivoにおけるビタミンB6の腸内細菌叢への影響を調べた結果、明らかな影響はみられなかった。次に、in vitroにおけるサルモネラ増殖への影響を調べた結果、ビタミンB6によるサルモネラの増殖制御は認められなかった。現在、サルモネラ以外の腸管系病原細菌を用いて、病原菌の腸感染におけるビタミンB6の役割を調べている。
RegIIIbetaは炎症により誘導発現する自然免疫因子の一つであることから、腸炎時における本菌の増殖に必要であるサルモネラ因子の同定とその解析を試みた。本研究では、外膜ストレス応答のCpxとタンパク質輸送システムTatに着目した。マウス腸炎モデルにおいて、それぞれの変異株の増殖能は明らかに低下したことから、CpxおよびTatはサルモネラの腸管内増殖に関与することが明らかになった。また、これらの増殖はマウス腸管の炎症反応に依存していた。さらに、胆汁酸による殺菌効果が、これらの変異株の増殖抑制に部分的に関わっていることを明らかにした。サルモネラ腸感染により炎症反応が誘導され、宿主はこの自然免疫の抗菌因子により本菌の排除を試みるが、サルモネラはこれに耐え、腸炎時における増殖を可能にしていることが示唆された。
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