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2018 年度 実施状況報告書

肝臓の血液浄化機能に着目した新たな敗血症治療法の確立~LL-37ペプチドを用いて

研究課題

研究課題/領域番号 16K08789
研究機関順天堂大学

研究代表者

鈴木 香  順天堂大学, 医学部, 助教 (90631929)

研究分担者 長岡 功  順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60164399)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワード抗菌ペプチド / 内毒素 / 血液浄化 / 血管内皮細胞 / オートファジー
研究実績の概要

グラム陰性菌の膜成分であるリポ多糖(LPS)は、内毒素とも呼ばれる敗血症の主要な病原因子である。一方、ヒトの好中球や上皮細胞から放出される生体防御ペプチドのLL-37は、LPSと結合してLPSの生理活性を中和する。我々は、LPSと結合したLL-37が、血中の異物除去を担う肝臓の類洞内皮細胞に速やかに取り込まれ、リソソームに移行することを見出している。このため、LL-37は血中に混入したLPSの除去剤として敗血症の治療に役立つ可能性がある。
昨年度までの研究成果として、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)にLL-37を作用させた際にオートファジーが活性化されることを見いだした。さらに、オートファジーが阻害された状況においてはLL-37の分解が遅延することが明らかになった。このことから、LL-37自身がオートファジーによって分解されることがわかった。したがって、LL-37がLPSと結合して類洞内皮細胞に取り込まれ、オートファジーで分解されることにより、LPSの速やかな分解を促すと考えられた。

今年度は、オートファジー機能不全のHUVECにおいて、LL-37が細胞の生存にどのような影響を示すか検討した。その結果、オートファジーを阻害した細胞ではLL-37の添加によって生細胞が減少し、死細胞(アポトーシスおよびネクローシス)が増加することがわかった。このことは、LL-37を血中LPSの除去剤として用いた場合、オートファジーが機能している細胞に対してはLPS除去の促進効果が期待できる一方、オートファジー機能不全に陥った血管内皮細胞に対してLL-37は細胞死を誘導する可能性が示された。そのメカニズムを明らかにするため、LL-37による細胞死誘導の仕組みについて検討をおこなった。LL-37はHUVECの核周囲に蓄積することがわかったが、詳細なメカニズム解明には至っていない。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

LL-37とLPSの取り込みにオートファジーが関わることが示唆されたため、当初の研究計画を若干修正して、LL-37によるオートファジーのメカニズムやその意義の解明に注力ししてきた。その結果、LL-37自身のオートファジー誘導能により細胞内消化が促進され、LPSのクリアランスが促進されることを明らかにできた。しかしながら、メカニズムの研究に注力したため、当初計画していたLL-37の改変ペプチドを用いた機能解析やマウスモデルを用いたin vivoでの検討はやや遅れている。

今後の研究の推進方策

LL-37はヒト血管内皮細胞に作用してオートファジーを活性化し、自身の細胞内消化を促進することを明らかにした。一方、オートファジー機能不全に陥った血管内皮細胞に対して、LL-37は細胞死を誘導することがわかったが、この詳細なメカニズムについては未解明である。また、今後、敗血症モデルマウスにLL-37を投与し、LPSのクリアランスの促進効果を明らかにするとともに、その際、オートファジーの活性化が関わるかどうかを調べる必要がある。このため、研究期間を延長して以上の課題に取り組むこととした。

次年度使用額が生じた理由

昨年度、本研究に必須な血管内皮細胞培養培地が世界的な品薄状態となり、今年度の前半まで同様の状況が続いたため、培養培地の調達に遅れが生じた。また、これとは別に研究計画に若干の変更が生じたため、ペプチド合成費用およびマウス購入費用が予定より減少した。さらに、例年2月あるいは3月に開催の日本細菌学会総会が2018年度は開催されなかった(2019年4月開催となった)ので、これに関わる参加費用や旅費の執行がなかった。
今回、研究期間の延長を申請して認められたので、次年度は培養細胞およびマウスを用いた研究を進めるとともに、関連学会での発表のための旅費や、論文投稿費用等に使用する予定である。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2018 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Investigation of the kinetics and mechanism of low endotoxin recovery in a matrix for biopharmaceutical drug products.2018

    • 著者名/発表者名
      Reich J, Tamura H, Nagaoka I.
    • 雑誌名

      Biologicals

      巻: 53 ページ: 1-9

    • DOI

      10.1016/j.biologicals.2018.04.001.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Protection of the endothelial glycocalyx by antithrombin in an endotoxin-induced rat model of sepsis.2018

    • 著者名/発表者名
      Iba T, Levy JH, Hirota T, Hiki M, Sato K, Murakami T, Nagaoka I.
    • 雑誌名

      Thrombosis Research

      巻: 171 ページ: 1-6

    • DOI

      10.1016/j.thromres.2018.09.042.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] MrgX2-mediated internalization of LL-37 and degranulation of human LAD2 mast cells.2018

    • 著者名/発表者名
      Murakami T, Suzuki K, Niyonsaba F, Tada H, Reich J, Tamura H, Nagaoka I.
    • 雑誌名

      Molecular Medicine Reports

      巻: 18 ページ: 4951-4959

    • DOI

      10.3892/mmr.2018.9532.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 宿主細胞の細胞死に注目した、抗菌ペプチドLL-37の敗血症マウスモデルに対する効果2018

    • 著者名/発表者名
      長岡 功
    • 学会等名
      第33回日本Shock学会総会
    • 招待講演
  • [学会発表] 抗菌ペプチドLL-37による好中球細胞外小胞(エクトソーム)の産生を介したマウス敗血症の病態改善2018

    • 著者名/発表者名
      熊谷由美, 村上泰介, 桒原京子, Reich Johannes, 田村弘志, 長岡 功
    • 学会等名
      第24回日本エンドトキシン・自然免疫研究会
  • [学会発表] Human cathelicidin peptide LL-37 ameliorates sepsis in a mouse model through induction of microparticles with antibacterial potential from neutrophils.2018

    • 著者名/発表者名
      Kumagai Y, Murakami T, Reich J, Tamura H, Nagaoka I
    • 学会等名
      2018 Joint Meeting of the Society for Leukocyte Biology & the International Endotoxin and Innate Immunity Society
    • 国際学会
  • [学会発表] MrgX2-mediated internalization of LL-37 and degranulation of human LAD2 mast cells.2018

    • 著者名/発表者名
      Murakami T, Suzuki K, Niyonsaba F, Reich J, Tamura H, Nagaoka I
    • 学会等名
      2018 Joint Meeting of the Society for Leukocyte Biology & the International Endotoxin and Innate Immunity Society
    • 国際学会
  • [学会発表] ヒト抗菌ペプチドLL-37による血管内皮細胞のオートファジーと細胞死に対する作用2018

    • 著者名/発表者名
      鈴木 香, 大熊真理, 長岡 功
    • 学会等名
      第91回日本生化学会大会
  • [学会発表] Mas-related gene X2を介した、マスト細胞への抗菌ペプチドLL-37細胞内移行と脱顆粒応答2018

    • 著者名/発表者名
      村上泰介, 森林叔子, 鈴木 香, 長岡 功
    • 学会等名
      第91回日本生化学会大会
  • [学会発表] 好中球細胞外小胞の産生を介したLL-37によるマウス敗血症の病態改善2018

    • 著者名/発表者名
      熊谷由美, 村上泰介, 桑原京子, 射場敏明, 長岡 功
    • 学会等名
      第101回日本細菌学会関東支部総会
  • [図書] エンドトキシン・自然免疫研究21- エンドトキシン・自然免疫研究のフロンティアをめざして(小谷穣治, 長岡 功 編集)2018

    • 著者名/発表者名
      長岡 功, 細田浩司, 中村果歩, 胡 忠双, 村上泰介, 鈴木 香, 田村弘志 他
    • 総ページ数
      69
    • 出版者
      医学図書出版株式会社
    • ISBN
      ONLINE ISSN 2434-1177
  • [備考] 順天堂大学大学院医学研究科 生化学・生体防御学

    • URL

      https://www.juntendo.ac.jp/graduate/laboratory/labo/seikagaku_seitaibogyo/html/index_j.html

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公開日: 2019-12-27  

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