研究課題/領域番号 |
16K08790
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
石島 早苗 帝京大学, 医真菌研究センター, 講師 (80147214)
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研究分担者 |
安部 茂 帝京大学, 医療技術学部, 教授 (10125974)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Candida albicans / アドヘシン / 消化管カンジダ症マウスモデル / キチンオリゴ糖 / N-アセチルグルコサミン |
研究実績の概要 |
抗生剤や抗癌剤治療による免疫力の低下は内因性の真菌症を増加させる。常在性真菌のカンジダ感染は多い。本研究の課題名に記した「腸管上皮から侵入・播種する微細機構」は感染増悪の初期段階で、(1)カンジダ菌の形態変化(酵母から菌糸形)の関与、(2)宿主組織への付着と侵入を意味する。平成28年度は、上記それぞれの研究を行い、進展が得られたので報告する。 (1)の形態変化について、誘引物質N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)に着目した。カンジダは腸管内の細菌とのブドウ糖争奪戦の回避策としてGlcNAcを摂取できるように進化した。GlcNAcは、カンジダの菌糸形発育の誘導物質である。GlcNAcを重合させたキチンオリゴ糖はGlcNAcと同様の効果を誘導するかを検討した。培養系での形態変化の誘導について、キチンオリゴ糖(GlcNAcの2~6量体)は重合数の増加に対応して抑制した。また、マウスモデルでGlcNAcは感染悪化させるたが、キチンオリゴ糖は抑制傾向が得られた。これらの成果を学会報告し、論文作成中である。 次に、(2)の宿主組織への付着・侵入に関しては、カンジダが宿主の組織に付着する際に菌体表面に発現するアドヘシン(接着因子)に着目して研究を進めた。培養系でのカンジダRNAからRT-PCR法によりアドヘシン特異的遺伝子発現を検出した。酵母形で発育する25℃と菌糸形発育の37℃の培養系を用いて、発現量の違いを比較検討した結果、培養3、17時間目でアドヘシンHWP1が菌糸形発育で有意に高い発現量を示した。また、消化管カンジダ症マウスモデルで胃に感染したカンジダ菌での発現量を同様に検出したが、その際に抗カンジダ効果の高い乳酸菌を介在させた群では発現量を減少させた。現在さらに多くのアドヘシンや組織への侵入に関連する酵素の発現について検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カンジダの消化管から全身播種の機構に重要な役割を果たす酵母形から菌糸形への形態変化について研究し、この形態変化を抑制するキチンオリゴ糖を発見した。既に、上記概要の項目に記載したが、これらの結果を論文化している。 また、独自開発した消化管カンジダ症マウスモデルを用いて、C. albicans TIMM1768株を感染させた後に、カンジダ感染のみでLeaky Gut状態が誘導されるか否かについての解析を行った。感染後48、72時間で、胃、小腸、肝臓、腎臓でのカンジダ生菌数を培養して検出した。その結果、48、72時間共に肝臓と腎臓で生菌が検出され、消化管に感染させたカンジダ菌が血流を介して全身へ播種している可能性が示唆された。すなわち、このマウスモデルでの実験が消化管から全身播種の研究に適することが示唆された。そこで、この実験系を用いて、全身播種するカンジダが消化管で使用しているアドヘシンを同定するために、まず、感染源である胃に定着したカンジダ菌が発現しているアドヘシンを検出した。現在アドヘシン関連の遺伝子9種類、その後の組織への侵入に関連する遺伝子8種類について、プライマーを設計し、順次定量PCRを行っている。その中で、培養系でも、菌糸形発育したカンジダで高濃度に発現していたHWP1について、胃に感染したカンジダでも検出することができた。宿主組織からカンジダRNAをより効率よく採取することが、感染部位での菌のアドヘシン発現をより詳細に検討する解決法だと考えて、現在実験条件を改良中である。 また、感染による血管透過性の亢進について、0.5%Evans Blue液を尾静脈に注射して、その後に組織中での色素の量を定量した。その結果、感染源の胃で血管透過性亢進の結果が得られた。感染による炎症性のサイトカインの検出では、ELISA法でTNF-αの定量を行ったが有意差は検出できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまで開発して改良してきた消化管カンジダ症マウスモデルで研究の推進に有効であることが分かったので、さらに活用して、消化管関連臓器、肝臓、腎臓以外の臓器への播種についてもこれまでの方法と同様の方法で検討を加えるつもりである。また、各臓器に播種したカンジダ菌の性質を知るために、これまで続けてきた定量RT-PCR法をより多く行って、感染している臓器の違いなどによって発現する遺伝子が変化しているのかどうかを検討する。また、網羅的に感染組織中のカンジダが発現している遺伝子について同定して、感染状態、あるいは、プロバイオティクスなどの共存下での遺伝子の発現状態を検討していきたい。 感染の際に、宿主組織内に侵入する微細機構については、電子顕微鏡用の試料を作成し、形態学的にも解析していく予定である。
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