研究課題
真菌が宿主体内でおこる鉄欠乏に適応することは、宿主体内での増殖、病原性の発現に重要となる。本研究は、病原酵母カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)を用いて、鉄欠乏ストレスの応答因子を同定し、それらの機能を宿主体内での重要性を含めて明らかにすることから、鉄欠乏応答システムの全容を解明すること、そして、そこで得られた知見をもとに抗真菌薬の標的分子の選出や化合物スクリーニングを行うことで、真菌感染症の治療戦略を創製することを目標とした。平成30年度は、前年度に引き続いて、鉄代謝に関わると考えらえた遺伝子の欠損株を作製し、培地中の鉄濃度が低いと増殖できない株を選抜、それらの株をカイコなどの感染モデルを用いて、病原性低下の有無を確認した。特に、細胞形態に関与するSerine/threonine protein kinase ELM1については詳細な解析を行い、国際学会(ISHAM 2018)にてその成果を発表した。また、鉄代謝調節に関連するオルガネラであるバキュオロのproton-translocating ATPase (V-ATPase)VPH2について、病原性への関与を含めて機能解析を行い、PLoS One. 2019 14(1):e021088として発表した。さらに、他の真菌との共通性を考察するために、アスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus)を用いて、真菌の鉄欠乏状態を起こす血清存在下で菌糸生育が低下するB11b遺伝子破壊株を用い、本菌の血清存在下での生育に関与する因子を探索し、3遺伝子の破壊により、血清存在下の生育能及びマウスへの病原性の低下を示すことを報告した。(第62回日本医真菌学会総会)。これらの結果は、真菌の鉄欠乏ストレスの応答機構の解明に大きく貢献する。
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PLoS OneJan 23;14(1):e0210883.
巻: 14 ページ: e0210883.
10.1371/journal.pone.0210883. eCollection 2019