研究課題/領域番号 |
16K08792
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研究機関 | 帝塚山大学 |
研究代表者 |
藤原 永年 帝塚山大学, 現代生活学部, 教授 (80326256)
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研究分担者 |
前田 伸司 北海道薬科大学, 薬学部, 教授 (50250212)
綾田 稔 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (90222702)
中 崇 帝塚山大学, 現代生活学部, 准教授 (40426599)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 非結核性抗酸菌症 / glycopeptidolipid |
研究実績の概要 |
我々は、糖ペプチド脂質抗原glycopeptidolipide (GPL) の欠失によりMycobacterium smegmatis J15cs株が細胞内で長期生存できることを分子レベルで解明・報告した。細胞内寄生性菌で重篤な呼吸器感染症MAC症の主要起因菌であるMAC菌は血清型特異GPLを発現している。本研究では、MAC菌の感染宿主内での長期生存、感染性・病原性の発揮がGPLの存否と連関していることを証明する。昨年度、全ゲノム配列が明らかになっているM. avium 104株のmps1遺伝子に相当する部位をハイグロマイシン (Hyg)、カナマイシン (KM) 耐性遺伝子で置き換えた欠損株の作製を実施した。本年度、得られたクローン株 (Hyg, KM耐性) のGPL発現を評価したが、全てGPL産生株であり、当初の目的が達成されなかった。MAC 104株は自然耐性を獲得し抗生剤による選択が難しかった。薬剤濃度の変更など種々検討したが、GPL欠損MAC 104株は現段階では得られていない。薬剤耐性が確認されていない肺MAC症患者から分離された臨床分離株M. intracellulare Ku11株で再度GPL欠失株の獲得を試みている。 並行してKu11株のGPL生合成遺伝子の解析を進めた。Ku11株由来GPLは糖鎖構造が5糖 (Rha-2-O-methyl Rha-Rha-Rha-Rha-6-deoxy Tal) からなり、既存の血清型GPL 28種類に比べ糖鎖が1個伸張したユニークな新規GPLであった。Ku11株のGPL構造、生合成遺伝子のクローニング解析を実施中である。GPL生合成遺伝子群のシークエンスを完了し、8個の糖鎖合成に関連すると考えられるorfを同定した。各orfの機能を解析するため、各orfをpVV16ベクターに導入して、糖鎖の最も少ない血清型1型菌(NF113株)を組換えた変異株を作製し、その表現型から糖転移遺伝子を同定する。Orf7導入1型菌は薄層クロマトグラフィー (TLC) の結果から、糖鎖が伸張していることが示唆された。次年度、orfの解析からGPLの生合成遺伝子を同定していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
GPL欠損株をM. avium 104株で作製していたが、薬剤の自然耐性獲得でサテライト株の出現が多く、種々検討したがGPL欠損株に適さないことが判明した。菌株をKu11株に変更して再度GPL欠損株の取得を目指したため、本来申請時に提案した計画はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終目標は、MAC菌の感染宿主内での長期生存、感染性・病原性の発揮がGPLの存否と連関していることを証明することである。本年度は、GPL生合成遺伝子であるmps1遺伝子の欠損MAC菌の取得をKu11株で再度実施する。GPL欠損株の取得がクリアすれば期限内にGPLに関連した宿主応答を確実に検証できると考えている。また、GPL生合成遺伝子の解析についても並行して実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)現在までの進捗状況の項で述べたように、当初の計画からやや遅れてる。GPL欠損株取得を再度検討しているため、平成29年度に購入予定であった消耗品を次年度に繰り越す措置をした。 (使用計画)平成29年度に計画していたGPL表現型の検討、宿主応答に必要な消耗品購入等は次年度に繰り越して利用する予定である。
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