研究実績の概要 |
MAC症の主要起因菌であるMAC菌は血清型特異糖ペプチド脂質抗原glycopeptidolipide (GPL)を発現している。本研究では、MAC菌の感染宿主内での長期生存、感染性・病原性の発揮とGPLの連関を証明する。MAC菌でGPL欠失変異株の取得を試みたが、遺伝子破壊株は取得できなかった。スクリーニング株は全てサテライト株であった。アプローチ法をGPL生合成遺伝子の解析法に変更した。新規GPL構造を解明した臨床分離株M. intracellulare Ku11株のGPL生合成遺伝子群をクローニングした。Ku11株由来GPLは糖鎖構造が6糖からなる。糖転移に関与するorfの同定を試みた。各orfをpVV16ベクターに導入して、糖鎖2糖からなる血清型1型MAC菌(NF113株)に挿入し、その表現型からorfの機能を解析した。糖転移遺伝子の候補orf6,8,16を用いて変異株を作製した。orf8挿入株は糖鎖が3個、orf8,16挿入株は糖鎖4個、orf16挿入株は糖鎖が4個伸張した。また、Orf6,8,16挿入株では、主産生GPLは糖鎖4個であったが一部糖鎖5個に伸張したGPLが産生されていた。Ku11株の完全GPL生合成に、末端の2-O-methyl-Rha, Rhaの糖転移遺伝子解明のみとなった。一方、長期生存性、感染性・病原性の解析については、Ku11株の天然型GPLが各糖鎖にメチル基がランダムに付加し、天然型GPLをTLR2,4を発現させたHEK細胞での認識機構を検討した結果、TLR2を介した宿主認識機構が明らかになった。MAC菌のGPLはTLR2を介して宿主認識されること、MAC感染者からGPL抗体が検出されること、M. smegmatisのGPL非産生株が宿主内で長期に生存すること等から、GPL分子が宿主病原性に寄与していることが示唆された。
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