研究課題
ヒトや動物の壊疽性腸炎の原因であるC型ウエルシュ菌β毒素の病原性発現機構の解明を行う。我々のグループでは、β毒素の受容体がP2X7受容体であることを報告した。さらに、本毒素は、細胞膜上のP2X7受容体に結合して、オリゴマーを形成しそのポアからの水分の流入により、細胞の膨化を誘導する。本研究では、β毒素の腸管障害作用について検討した。β毒素をヒト腸管由来細胞である Caco-2細胞に作用させると、本毒素は細胞膜上でオリゴマーとなりポアを形成して、初期には細胞膜のBlebb形成が認められ、その後、細胞膜破壊が認めらた。すなわち、本毒素は、腸管細胞に障害を示すことが明らかとなった。そこで、Caco-2細胞の上皮バリア機能に対するβ毒素の作用を検討するため、Caco-2細胞の本毒素を添加して膜電気抵抗値(TEER)を測定した。その結果、毒素処理後、6時間まで測定したが、TEERの変化は認められなかった。さらに、タイトジャンクション(TJ)分子であるocculdinやclaudinの変化を観察すると、本毒素処理してもこれらのタンパク質の変化は確認できなかった。すなわち、β毒素は、腸管上皮のバリアー機能には影響を与えず、腸管上皮細胞を破壊することに障害を示すことが判明した。β毒素の治療薬の開発を検討するため、P2X7受容体阻害剤ブリリアントブルーG(BBG)は、予備実験ではβ毒素のマウス致死活性を抑制した。そこで、β毒素のマウス回腸ループの障害作用に対するBBGの効果を検討すると、本毒素による腸管障害作用はBBGで抑制された。以上より、BBGは、本毒素の腸管毒性の抑制することから、本菌による感染症の効果的な治療薬となることが分かった。
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