劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)は、患者の約30-50%が死亡する極めて致死率の高い全身性感染症である。このうちB群レンサ球菌によるSTSSは、日本において、その症例数が5年前と比較して10倍以上に増加している。しかしながら、STSSを引き起こすB群レンサ球菌について世界を含めてほとんど研究されていない。B群レンサ球菌によるSTSSにおいて、菌がどのように変化したか調べることを目的とする。 前年度の研究結果より、STSS株において特定の遺伝子において変異が50株中13株で見られ、一方、膣由来株においては50株中1株しか変異がみられなかった。この遺伝子の変異株を温度感受性ベクターを用いて遺伝子欠損株を作製したが、溶血性の違いから2種類の表現型を示す変異体が作成された。この2種類の株について、元株とゲノムを比較したが、どちらとも目的の遺伝子に欠損変異がみられたが、それ以外にも変異がみられ、どちらが変異株であるか明らかにできなかった。そこで、相補性試験を行うため、intactの遺伝子を保有するプラスミドを作製した。このプラスミドを欠失株に導入し、毒素遺伝子の発現量を調べた。その結果、どちらの欠失変異株とも半量発現の減少がみられた。このことから、どちらの欠失変異株とも、遺伝子の欠損をしているが、この遺伝子以外の変異により、発現量の減少が抑えられるリバータントがとれている可能性が考えられた。
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