研究実績の概要 |
菌血症を伴う肺炎患者の血液由来の侵襲性NTHi(20株)、菌血症を伴わない肺炎患者の喀痰由来の非侵襲性NTHi(21株)について、試験管内で血清感受性試験(Serum bactericidal assay; SBA)を実施した。侵襲性、非侵襲性株間におけるSBA (Log killing)には、侵襲性株(中央値:0.95, range 0.2~4.3)、非侵襲性(中央値:1.55, range 0.3~4.1)間で有意差を認めなかった。本結果から、本研究において侵襲性NTHi株は血清抵抗性であるとする仮説は否定された。また、非侵襲性NTHi株にも血清抵抗性株が存在することが明らかとなった。さらに、血清抵抗性に相関するとされるvacJとSBAとの相関を検討したが、相関は認められなかった。 上記のNTHi血液由来株19株、喀痰由来株18株について、血清感受性に関与する遺伝子を指標とし、RoaryによるPangenome及びScoryによるPan-GWAS解析を行った。その結果、血清抵抗性の株が合計16個の遺伝子を保有する傾向にあり、LOS関連の遺伝子群が一つの領域に含まれていた。 また、遺伝子座単位での比較の結果、解析した菌株にはtype 1遺伝子群を保有する菌株グループとtype2遺伝子群を保有する菌株グループとに分けることができ、type 1遺伝子群保有株は血清感受性で、type 2遺伝子群保株は血清抵抗性であった。LOS関連遺伝子群はtype 1遺伝子群に含まれることから、特異的なLOS構造が血清感受性に関与する可能性が示唆された。さらに、血液由来の血清抵抗性を示す侵襲性NTHi株のうち、type 2遺伝子保有株は特徴的なprophageが染色体上に存在していた。これらの遺伝子が、type 2遺伝子保有株の血清抵抗性に関与する可能性が考えられた。
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