研究課題
二成分制御系はヒスチジンキナーゼとレスポンスレギュレーターから成るリン酸基転移型のシグナル伝達系の一つであり、細菌が外部環境を認識して遺伝子発現を制御する上で主要な役割を担う。コレラ菌のキチン応答性ヒスチジンキナーゼであるChiS を介したシグナル伝達は,従来までのドグマから大きく逸脱している。ChiSを起点とするシグナル伝達は、非二成分制御系の転写制御因子TfoSに依存する経路とTfoSに依存しない経路の2つに分岐してり、両経路の活性化にはChiSのリン酸基転移に関わるアミノ酸残基を必要としない。さらにこのシグナル伝達は、細胞外からのキチン刺激だけでなく,糖の取り込みに関わるリン酸基転移系PTSを介して細胞内からも調節される。本年度はPTS系の蛋白質EIIAglcによるChiSシグナル伝達系の阻害現象について論文発表を行った。また、ChiSとTfoSを精製するために、種々の発現ベクターおよび大腸菌株を用いて蛋白質の大量発現系を構築しようと試みたが、いずれの蛋白質も精製できるほど十分に発現しないうえに、可溶化もしなかった。今後はChiSとTfoSを精製するためのソースをいかに準備するかが課題である。
3: やや遅れている
本年度はEIIAglcによるChiSシグナル伝達系の阻害現象について論文発表を行うことができたものの、ChiSとTfoS(およびChiSとEIIAglc)の相互作用解析についてはほとんど進展しなかったため。
平成30年度はChiSの精製と蛋白質間の相互作用解析に焦点を絞る。1)ChiSの精製と抗ChiS抗体の作製:無細胞蛋白質合成系を用いてChiSを精製後、精製蛋白質に対する抗体を作製する。2)ChiSとEIIAglcもしくはTfoSとの相互作用:ChiSとペプチドタグで標識したEIIAglcを大腸菌で発現させた後、ケミカルクロスリンクを行う。次に、膜画分を抽出し、抗ChiS抗体を用いた免疫沈降法によりChiSとEIIAglcの複合体を検出する。ChiSとTfoSの相互作用についても同様の解析を行う。
(理由)年度末納品等にかかる支払いが平成30年4月1日以降となったため、当該支出分については次年度の実支出額に計上予定。平成29年度分についてはほぼ使用済みである。(使用計画)上記のとおり。
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Cellular Microbiology
巻: e12846 ページ: -
10.1111/cmi.12846
Journal of Bacteriology
巻: 199 ページ: -
10.1128/JB.00127-17