肺炎球菌は鼻咽頭に常在し、小児や高齢者では菌血症・髄膜炎といった致死性の高い侵襲性肺炎球菌感染症を引き起こす。近年、血清型交代によるワクチンが効かない血清型の肺炎球菌や、多剤耐性肺炎球菌の分離例が増加しており、新規治療法の開発が喫緊の課題である。本研究により、一次バリアである粘膜上皮細胞内での感染成立に必要な病原因子、菌の排除に必要な宿主細胞内での膜輸送系、さらには菌と宿主細胞との相互作用の一端が明らかとなり、新規治療法開発の標的分子探索に必要な基礎的な知見を多く得ることが出来た。今後、本研究をさらに発展させ、肺炎球菌と宿主との相互作用全体を俯瞰するモデルを構築していきたいと考えている。
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