研究課題/領域番号 |
16K08806
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
福山 聡 東京大学, 医科学研究所, 特任准教授 (00626517)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 生体イメージング / インフルエンザ / 肺 / 炎症 |
研究実績の概要 |
平成28年度に構築した生体イメージングシステムを用いて、インフルエンザウイルスに感染した生きたマウスの肺を解析した。特に2光子顕微鏡を用いた研究では、レポーターインフルエンザウイルス(Color-flu)を感染させたマウスに好中球特異的な抗体Ly-6Gを経静脈投与して、インフルエンザウイルス感染細胞と好中球の動態を詳細に観察した。その結果、高病原性鳥H5N1インフルエンザウイルスに感染したマウスでは、季節性インフルエンザウイルス由来H1N1ウイルスであるPR8株に感染したマウスと比較して肺への好中球の遊走が感染早期に見られることが分かった。また、好中球やマクロファージ特異的なレポーターマウスを用いて、それぞれの免疫細胞の動態を観察することに成功した。インフルエンザウイルスに感染した肺では、血管透過性が上がることが知られている。そこで、蛍光標識したデキストランを経静脈的に投与して、2光子顕微鏡でデキストランの肺胞腔への漏出を観察した。その結果、H5N1ウイルスに感染した肺では顕著な血管透過性の亢進を認めた。 これらの2光子顕微鏡での実験は当研究室の植木紘史博士研究員、Wang I-Hsuan博士研究員の協力のもとで行った。 さらに、インフルエンザウイルスの増殖に関連のある宿主因子のKOマウスを作出し、マイクロCTを用いて継時的に肺の組織障害のレベルを測定し、宿主因子の機能について個体レベルでの検討を開始した。CRISPR-Cas9システムを用いた全身KOマウスの中には、インフルエンザウイルス感染に対して肺の組織障害が減弱している系統も認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
高病原性鳥H5N1インフルエンザウイルスと季節性インフルエンザウイルス由来H1N1ウイルスであるPR8株のレポーターウイルスに感染したマウスの肺での比較解析に成功した。さらに、レポーターマウスやKOマウスを用いた生体イメージングにも成功し、個体レベルでの宿主因子の解析を始めることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、これまでに構築した生体イメージングをさらに発展させる。様々なインフルエンザウイルスの増殖に関連する宿主因子のKOマウスをレポーターインフルエンザウイルスに感染させて、マイクロCTを用いて肺の組織障害を計測し、宿主因子の機能解析を進める。また、2光子顕微鏡を用いた観察では、免疫細胞の動態だけでなく、インフルエンザウイルス感染による肺胞上皮や血管内皮の障害についても検討する。
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