研究課題/領域番号 |
16K08807
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
新堂 啓祐 京都大学, 医学研究科, 特定病院助教 (10602344)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | HIV-1 / Viral infectivity factor / CBF-beta / MDM2 / ユビキチン / プロテアソーム / タンパク間相互作用 / PP2A |
研究実績の概要 |
HIV-1 Vifの誘導する細胞周期停止機構については、Vifの構成するユビキチンリガーゼ複合体の形成が必須であることが知られていたが、その具体的な標的基質については不明であった。本研究ではVifの誘導する細胞周期停止機構に関連する標的基質の候補として、近年Vifの基質であることが報告されたPP2A B56ファミリー蛋白群を検討し、特にその中でもPPP2R5Dが有力な候補であることを明らかにした。細胞周期停止を誘導するNL4-3 Vifの発現細胞ではPPP2R5D蛋白レベルが低下するのに対し、細胞周期停止を誘導しないHXB2 Vif発現細胞ではPPP2R5D蛋白レベルは非発現細胞と同等であった。また、 Vifの発現細胞では細胞周期G2停止が誘導されるのに対し、そこにPPP2R5Dの発現ベクターを導入することにより、細胞周期停止の誘導に対抗することを示した。また、siRNAを用いたPPP2R5Dのノックダウンにより細胞周期停止が誘導されることも示した。さらに、細胞周期停止に関わるVifの決定基としてI31およびR/K33を同定し、これらの残基がPPP2R5Dとの結合に関わることも証明した。これらの成果は、Vifの誘導する細胞周期停止機構の分子レベルでの全体像の解明に向けて非常に重要な情報であり、HIV-1の病原性解明や感染制御に向けての礎となるものであるが、さらに一般的な細胞周期制御におけるPPP2R5Dの役割に関しても大いなる情報を与えるものであり、より広い研究者に対して重要な情報を提供するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではHIV-1 Vifの細胞内調節機構および機能発現機構の解明を目的とし、3つの目標を設定したが、そのうちの一つについてはすでに論文として発表している(JBC 2016)。また、2つめについても成果を上げ、この分野で最も権威のある国際学会であるCold Spring Harbor Meeting on Retrovirusesにおいて口頭発表に選ばれ発表した(2017年)。また、日本ウイルス学会でも口頭発表に選ばれ発表した(2017)。これについては投稿準備を進めているところである。また、3つめについてもすでに実験に着手しており、全体としておおむね順調に進呈していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
Vifの誘導する細胞周期停止機構については、本研究でその直接の標的基質としてPPP2R5Dを同定したが、そこから細胞周期停止に至るまでの過程については不明な点が多く、引き続き研究を進めてていく責務があると考えている。また、VifがRUNXファミリーの転写因子活性にどのような影響を与えているかを解明することは、HIV-1の病原性発現や潜伏感染機構の解明などに貢献する可能性もあり、今年度は特に重点的に進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の2つめの目標であるVifの誘導する細胞周期停止機構の解明については2017年度に論文を投稿する予定であったが、2018年度に投稿することとなったため、そのための投稿費用および解析費用を次年度に使用する予定とした。
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