本年度はHIV-1 Vif の誘導する細胞周期停止機構について、蛋白脱リン酸化酵素であるPP2A-B56ファミリー蛋白をVifが分解促進することが、必要かつ十分であることの確認のための実験を繰り返し、これまでの結果をまとめて学術雑誌に投稿した。最終的には"Critical role of PP2A-B56 family protein degradation in HIV-1 Vif mediated G2 cell cycle arrest"のタイトルで、Biochemical and Biophysical Research Communications 誌に掲載された。 研究期間全体の主な成果としては、1) CBF-betaによるVifの細胞内レベルの維持機構は、CBF-betaがMDM2によるVif のユビキチン化を抑制することであることを提案し、それを証明したこと(JBC2016)、2) Vif による細胞周期停止機構はVif によるPP2A-B56のユビキチン化により誘導されること(BBRC2020)、の2点を挙げる。1)の成果は、VifとCBF-betaの結合を阻害する新規の抗HIV-1治療薬の実現可能性を高く期待させる成果であることに意義があり、研究分野としてさらなる研究の推進を促すものである。また、2)については、HIV-1感染における病原性発現や感染性増強のメカニズムの一部を解明したのみならず、既存の細胞周期制御機構に関する知見では説明できない現象の発見でもあり、広く細胞生物学分野の研究に寄与する意義をも持つ。
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