研究課題/領域番号 |
16K08816
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
村木 靖 岩手医科大学, 医学部, 教授 (00241688)
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研究分担者 |
野田 岳志 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 教授 (00422410)
本郷 誠治 山形大学, 医学部, 教授 (90229245)
佐々木 裕 岩手医科大学, 医学部, 助教 (80526062)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | C型インフルエンザウイルス / 出芽 / 粒子形成 / 細胞膜 / 脂質ラフト |
研究実績の概要 |
A型インフルエンザウイルスの主たる出芽部位は細胞膜(形質膜)表面の脂質ラフトlipid raftである。これに対し、代表研究者の村木靖は2007年、同じオルソミクソウイルス科に属するもののC型インフルエンザウイルスは主に脂質ラフト以外の領域の形質膜から出芽することを提唱した。しかしその詳細は不明であった。 今般、C型インフルエンザウイルスM遺伝子の890位にA(アデニン)→C(シトシン)の変異をもつ組換えウイルス(M-A890C)を作製した。この変異はスプライシングのbranching pointを破壊するため、M遺伝子のスプライシングの効率が低下していた。結果としてM-A890C感染細胞においては、少量のM1タンパクと大量のCM2タンパクが発現した。 そこで本研究では、M-A890C感染細胞とM-A890C粒子を詳細に解析し、M-A890Cの出芽部位が脂質ラフト以外の領域の形質膜である証拠をつかむこととした。本研究によってC型インフルエンザウイルスの出芽部位が脂質ラフト以外の領域の形質膜であることが明らかにされれば、エンベロープウイルスの第3の出芽様式を提唱することになる。 M-A890C感染細胞に発現する大量のCM2タンパクは、低濃度の界面活性剤存在下での膜浮遊解析で脂質ラフトに親和性を示さなかった。すなわちCM2は、脂質ラフト以外の領域のマーカーとして利用できることが明らかになった。 そこで脂質ラフト形成阻害剤methyl-beta-cyclodextrin(M-beta-CD)を添加した培養HMV-II細胞にA型およびC型インフルエンザウイルスを感染させ、薬剤の有無による増殖能を比較した。しかしながら、M-beta-CDの毒性により評価できる結果が得られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
脂質ラフト形成阻害剤methyl-beta-cyclodextrin(M-beta-CD)を添加した培養細胞にA型およびC型インフルエンザウイルスを感染させ、薬剤の有無による増殖能を比較した。 本実験ではヒト悪性黒色腫由来の培養細胞であるHMV-II細胞を用いた。A型およびC型ウイルスの両者ともに良好に増殖することのできる細胞株である。しかしながら、理由は不明であるがHMV-II細胞はM-beta-CDに感受性が強く、添加後早期に形態変化を起こし、同細胞を用いての実験は不可能と判断せざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、当初予定していたHMV-II細胞を用いた感染実験ができなかった。HMV-II細胞が予想以上にM-beta-CDに感受性が強かったためである。 そこでC型インフルエンザウイルスが増殖可能な細胞株(MDCK、LLC-MK2、CV-1細胞など)を用いた実験を計画している。これらの細胞を種々の濃度のM-beta-CD存在下で培養し、その生存を確認後、ウイルス感染実験を予定している。 しかしながらHMV-II細胞に比し、これらの細胞におけるC型インフルエンザウイルスの増殖能は低いことが示されている。解析に充分なウイルス増殖能が得られない場合、出芽部位の同定実験は困難と予想される。そこで、下記のようにウイルス様粒子virus-like particle (VLP)作製系を用いた実験を計画している。 M遺伝子のスプライシング効率が低下したウイルス感染細胞では、CM2が大量に発現する。これを模した細胞を用いる。すなわち大量のCM2発現プラスミドを各種ウイルス蛋白発現プラスミドと共に293T細胞にトランスフェクションする。この細胞からはCM2を大量に取り込んだVLPが産生される(データ未発表)。そこで産生されるVLPおよびVLP産生細胞を解析することで、C型ウイルスの出芽部位を推定することとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
培養細胞が薬剤に対して極めて高い感受性を示し、当初計画したウイルス感染実験が実施できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に実施予定の研究における消耗品費(試薬)として使用する予定である。
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