研究課題
C型インフルエンザウイルスの出芽部位budozoneを明らかにすることが本研究の目標である。今までの成績から、出芽領域は形質膜の脂質ラフト以外の領域であることが示唆されている。これが真実であれば、新規のエンベロープウイルスの出芽部位を提唱することになる。本研究では、M遺伝子のスプライシング効率を低下させたウイルスを用いた解析を行った。脂質ラフト形成阻害剤methyl-beta-cyclodextrin(M-beta-CD)に対する毒性が予想以上に高かったため、ウイルス感染HMV-II細胞の解析を行うことができなかった。M-beta-CDに対する毒性の低い細胞(MDCK、LLC-MK2、CV-1細胞)は、予想されたように、C型インフルエンザウイルスの増殖能が低く、解析が不可能であった。そこでウイルス様粒子(VLP)産生細胞を解析することとした。CM2を大量に発現するVLP産生細胞(293T細胞)からは、野生型VLPと同様の形態をもつVLPが産生されていることを確認した。今年度(最終年度)では、VLP産生細胞を可溶化および不溶化成分に分画し、それぞれに含まれるウイルスタンパクを検出した。その結果、HEFとCM2の膜タンパク質の大部分はともに可溶化成分に回収された。膜タンパク質以外のタンパク(NP, M1, NS1, NS2)は、両方の成分に回収された。これらの結果は、VLPの出芽部位は脂質ラフト以外の領域であること、大量のCM2の発現によってもHEFの分布(すなわち出芽領域)に変化はなかったことを示唆している。このように、C型インフルエンザウイルスの出芽部位budozoneは、形質膜の脂質ラフト以外の領域であることを示唆する成績が得られた。今後は感染細胞を用いてその分子機構について明らかにすることが課題である。
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