研究課題/領域番号 |
16K08822
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
有田 峰太郎 国立感染症研究所, ウイルス第二部, 主任研究官 (70356244)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ウイルス / エンテロウイルス / PI4KB / 阻害剤 / アロステリック制御 / 作用機序 / 脂質 |
研究実績の概要 |
MDL-860に関して、さらに詳細な解析を進めた。その結果、MDL-860処理PV感染細胞では、既知のPI4KB阻害剤と比べて効果が表れる時期が2~3時間遅れるものの、ホスファチジルイノシトール-4-一リン酸(PI4P)の量が低下し、ウイルス複製複合体からOSBPが解離すること、MDL-860処理細胞は不可逆的な抗PV活性を示すことが判明した。MDL-860処理細胞のトランスクリプトーム解析の結果、MDL-860は抗酸化応答経路NRF2/KEAP1経路を活性化することが示唆された。これらの結果から、MDL-860がシステイン残基への共有結合を介して不可逆的にPI4KBの活性を阻害することが予想された。そこでMDL-860存在下で発現させたPI4KBを精製してin vitroで活性を測定した結果、未処理細胞から精製したPI4KBと比べて90%以上も活性を失っていることが判明した。PI4KBの持つ13個のシステイン残基をセリンに置換した変異体に対するMDL-860の影響を調べた結果、646番目のシステイン残基をセリンに置換したPI4KB変異体はMDL-860の阻害を全く受けないこと、マススペクトルの解析からMDL-860がPI4KBの646番目のシステイン残基のみに共有結合していること、このPI4KB変異体を発現した細胞ではMDL-860の抗PV活性が見られないことが示唆された。これらの結果から、MDL-860は、PI4KBの646番目のシステイン残基に直接共有結合することにより、離れた位置にあるPI4KB活性部位に影響する、アロステリック阻害剤であることが示唆された。PI4KB活性のアロステリック制御機構およびアロステリック阻害剤はこれまでに知られておらず、本研究により初めて明らかにされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画した解析が、およそその通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
これまで通り勧めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 年度末納品等にかかる支払いが平成30年4月1日以降となったため、当該支出分については次年度の実支出額に計上予定。平成29年度分についてはほぼ使用済みである。 (使用計画) 上記のとおり。
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