研究課題/領域番号 |
16K08825
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
石井 孝司 国立感染症研究所, ウイルス第二部, 室長 (40280763)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | E型肝炎ウイルス / 複製機構 / 病原性 / 阻害剤 |
研究実績の概要 |
E型肝炎ウイルスのレプリコンを樹立し、化合物ライブラリのスクリーニングを行ったところ、強い活性を示した化合物の中に共通の作用機序を有するものが見出された。現在、これらの化合物の標的となっている酵素について、HEV複製への関与について解析を進めている。また、HEVの複製酵素をコードしている非構造蛋白であるORF1について、愛媛大学プロテオサイエンス研究センターと共同で、コムギ無細胞タンパク質合成技術を利用してORF1全長およびプロテアーゼと推定される領域を発現させることに成功した。これまで同蛋白の発現は、蛋白自体の毒性から非常に困難で成功例はほとんどなく、コムギ無細胞タンパク質合成技術の優位性を示すものと考えられる。現在のところは合成蛋白の可溶化に難点があり、この点を克服することが重要であるが、発現した蛋白を用いて、HEVプロテアーゼのin vitroでの活性の確認、ORF1のプロセシングについて解析を行っている。また、ORF1が宿主蛋白による修飾を受けて活性が調節されている可能性について検討を進めている。さらに、HEVレプリコンが複製している細胞にHEV構造蛋白を供給することでトランスパッケージングを行うことができるかどうかを検討している。トランスパッケージシステムは、構造蛋白、非構造蛋白それぞれを独立に解析することができ、ウイルス感染や複製のメカニズムを解析する上で有用なシステムであるが、レプリコンを包埋した粒子の作製には成功しており、現在本粒子の感染性の検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HEVレプリコンを樹立し、化合物ライブラリを用いて大規模なスクリーニングを行い、阻害物質を見出している。また、これらの中に同じ作用機序を持つものがあることも見出し、この作用を受ける宿主蛋白の解析を行っている。2年目に解析を継続することにより、HEVの複製に重要な役割を果たす宿主因子を同定できる可能性があると考えられる。 また、愛媛大学プロテオサイエンス研究センターと共同で、これまで発現が困難であったHEV ORF1の大量発現に成功した。現在発現蛋白の可溶化の検討を行っているが、成功すれば蛋白のコードする各酵素の活性の検討、プロセシングの解析、本蛋白の宿主による修飾等の研究が可能になる。 また、トランスパッケージングシステムは、ウイルスの感染や複製を詳細に解析できる優れたシステムであるが、現在 HEVレプリコンが複製する細胞に構造蛋白を供給し、粒子を産生させることには成功している。今後、このレプリコンのレポーターを指標としてトランスパッケージ粒子の感染性について解析を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
・HEVレプリコン活性を指標として、化合物ライブラリを用いた阻害剤スクリーニングをさらに進め、強い阻害活性を持つ化合物を同定する。同定した化合物の機序からHEV複製に重要な役割を果たすと考えられる宿主蛋白を同定し、複製への関わりを調べ、さらに病原性発現機構の解析を行う。 ・コムギ無細胞タンパク質合成技術を用いて合成したHEVの非構造蛋白について、各ドメインの酵素活性の解析、プロセシングの解析、宿主蛋白による翻訳後修飾と複製への影響について調べる。現在のところ可溶化が難点となっており、この点について早急に解決する必要がある。 ・HEVレプリコン複製細胞に構造蛋白を供給することで得られるトランスパッケージング粒子について、培養細胞への感染性を調べる。成功した場合、レポーター活性を指標として、宿主への感染性を規定する因子の同定を行う。また、レプリコンの配列に変異を加え、HEV複製酵素群の活性について解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究費の支給が9月からとなったため。本研究費を使用できるかどうかが明らかとならなかったため、使用計画を長期に渡り立てることができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年度の当初に計画していた実験は9月末から開始しており、実験計画自体は順調に進展している。2017年度に差額も含め研究費は使用できる予定である。
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