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2017 年度 実施状況報告書

TLR7/8の一本鎖核酸認識における制御分子基盤の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16K08827
研究機関東京大学

研究代表者

柴田 琢磨  東京大学, 医科学研究所, 助教 (30554505)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードTLR7 / ヌクレオシド / マクロファージ
研究実績の概要

Toll like receptor (TLR) 7およびTLR8 はウイルス由来一本鎖RNA(ssRNA)を認識し、強力な抗ウイルス応答を誘導する。これまでに我々は、TLR7/8がssRNA自体ではなく、ssRNAの分解産物であるヌクレオシドとオリゴヌクレオチドの両者を同時に認識して免疫応答を誘導するという知見を見出してきた。実際、ssRNAとグアノシン、またはウリジンを加えて免疫細胞を刺激することで、TLR7とTLR8はそれぞれ相乗的に活性化する。しかし、免疫細胞に発現するTLR7/8がssRNAの分解産物であるグアノシンやウリジンを実際に結合するのを示すのは難しい。そこで本研究では、RNA分解に関わるRNaseや核酸トランスポーターがTLR7/8によるssRNA応答に関与することを示し、ssRNA分解が細胞内TLR7/8応答に必須であることを実証する。
平成28年度、TLR7のssRNA応答に関与する核酸代謝関連分子の検証をin vitroで行った結果、RNaseT2やSLC29A3がTLR7の制御因子として見出した。また、RNaseT2やSLC29A3のノックアウトマウスも作製したところ、これらマウスにおいて顕著なマクロファージの蓄積(Histiocytosis)が認められた。平成29年度はこれらノックアウトマウスをTLR7ノックアウトマウスと交配し、得られたフェノタイプがTLR7依存的か否かの検証を行った。その結果、SLC29A3ノックアウトマウスにおけるHistiocytosisはTLR7依存的である可能性が非常に高かった。一方、RNaseT2ノックアウトマウスにおける病態はTLR7非依存的であった。現在、RNaseT2ノックアウトマウスにおいて活性化し得る核酸認識センサーの同定を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画通り、TLR7によるssRNA応答に核酸代謝関連遺伝子が関与することを証明することができた。また、ノックアウト細胞を用いることでSLC29A3とRNaseT2以外のヌクレオシドトランスポーターがTLR7応答に関与することも見出している。以下、予定していた研究内容の達成度の詳細を記載する。
1.代謝関連遺伝子ノックアウト細胞の作製 : 平成28年度にノックアウト細胞を用い、ヌクレオシドトランスポーターであるSLC29A3およびRNaseT2がTLR7応答に関与することを見出した。平成29年度には、SLC29A3以外のヌクレオシドトランスポーターが一部のTLR7応答を制御することも見出しており、平成30年度にはそれら分子のノックアウトマウスを作製して解析する予定である。
2. CRISPR/CASシステムを利用したノックアウトライブラリースクリーニング : 平成28年度にBa/F3レポーター細胞を用いたノックアウトライブラリースクリーニングを行ったが、ssRNA応答に関与する新規分子は得られなかった。現在、ssRNA応答性が高いマクロファージ細胞株のJ774細胞を用いたノックアウトライブラリースクリーニングを進めている。
3. 代謝関連遺伝子ノックアウトマウスの作製および解析: RNaseT2およびSLC29A3ノックアウトマウスの作製を行い、これらノックアウトマウスにおいてHistiocytosisが生じることを示した。特にH症候群モデルであるSLC29A3ノックアウトマウスの病態はTLR7依存的あることが判明してきており、今後はH症候群においてTLR7が治療ターゲットとなるか否かを検証していく。また、in vitroにおいてTLR7応答に関与していることが判明したヌクレオシドトランスポーター2遺伝子に関してもノックアウトマウスを作製中である。

今後の研究の推進方策

これまでに得られた結果より、ssRNAによるTLR7/8の活性化において核酸代謝関連遺伝子が関与することが明らかとなった。特に、ヒト疾患であるH症候群のモデルとしても知られるSLC29A3ノックアウトマウスの病態がTLR7依存的であることが明らかとなってきたことより、今後はH症候群の治療においてTLR7がターゲットとなり得るかを中心に検証を進めていく。一方、RNaseT2におけるHistiocytosisは予想外にTLR7非依存的に引き起こされていた。RNaseT2はssRNA分解酵素であることからTLR7以外のssRNAセンサーが活性化された結果であると考えられる。平成30年度はこのRNaseT2ノックアウトマウスにおけるフェノタイプの原因遺伝子の同定を目指す。また、SLC29A3とRNaseT2以外にもin vitroの系を用いてTLR7応答を制御するヌクレオシドトランスポーターを2種類見出しており、これら遺伝子のノックアウトマウスを作製・解析することでTLR7応答におけるヌクレオシド代謝の意義の解明を更に進める。

次年度使用額が生じた理由

予定していたノックアウトマウスの作製費用が足りなくなった為、次年度分と合わせて使用するため。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Mechanisms controlling nucleic acid-sensing Toll-like receptors2018

    • 著者名/発表者名
      Miyake K, Shibata T, Ohto U, Shimizu T, Saitoh SI, Fukui R, Murakami Y
    • 雑誌名

      Int Immunol

      巻: 8 ページ: 43-51

    • DOI

      10.1093/intimm/dxy016

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The protective effect of the anti-Toll-like receptor 9 antibody against acute cytokine storm caused by immunostimulatory DNA2017

    • 著者名/発表者名
      Murakami Y, Fukui R, Motoi Y, Shibata T, Saitoh SI, Sato R, Miyake K
    • 雑誌名

      Sci Rep.

      巻: 7 ページ: 44042

    • DOI

      10.1038/srep44042

    • 査読あり
  • [雑誌論文] TLR7 mediated viral recognition results in focal type I interferon secretion by dendritic cells2017

    • 著者名/発表者名
      Saitoh S, Abe F, Kanno A, Tanimura N, Saitoh Y, Fukui R, Shibata T, Sato K, Ichinohe T, Hayashi M, Kubota K, Kozuka-Hata H, Oyama M, Kikko Y, Katada T, Kontani K, and Miyake K
    • 雑誌名

      Nat. Commun

      巻: 8 ページ: 1592

    • DOI

      10.1038/s41467-017-01687-x

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Requirement of glycosylation machinery in Toll-like receptor responses revealed by CRISPR/Cas9 screening2017

    • 著者名/発表者名
      Sato R, Shibata T, Tanaka Y, Kato C, Yamaguchi K, Furukawa Y, Shimizu E, Yamaguchi R, Imoto S, Miyano S, Miyake K
    • 雑誌名

      Int Immunol

      巻: 29 ページ: 347-355

    • DOI

      10.1093/intimm/dxx044

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Emerging roles of the processing of nucleic acids and Toll-like receptors in innate immune responses to nucleic acids2017

    • 著者名/発表者名
      Miyake K, Shibata T, Ohto U, Shimizu T
    • 雑誌名

      J. Leukocyte Biol

      巻: 101 ページ: 135-142

    • DOI

      10.1189/jlb.4MR0316-108R

    • 査読あり
  • [学会発表] Guanosine sensing by TLR7 and its implication in inflammatory disease2017

    • 著者名/発表者名
      Takuma Shibata
    • 学会等名
      第46回 日本免疫学会学術集会
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Nucleosides are endogenous ligands for TLR7 and TLR82017

    • 著者名/発表者名
      Takuma Shibata
    • 学会等名
      Keystone symposium (Viral immunity)
    • 国際学会
  • [産業財産権] SLC28又は29遺伝子異常症の治療剤又は予防剤2017

    • 発明者名
      三宅健介、柴田琢磨
    • 権利者名
      三宅健介、柴田琢磨
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      215043

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公開日: 2021-01-27  

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